判例 婚姻費用算定に不貞行為による婚外子の養育費は認めない

 近年、日本では諸外国と同様に、婚外子にも嫡出子と同様の権利を与えるという傾向があるようだ。

 国際社会から長年にわたって批判を受けていた民法900条4号ただし書の「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」とされていた規定が、平成25年9月4日最高裁判所にて違憲と判断されたのは記憶に新しい。

 婚姻関係と婚外子に関する同様の事項で、婚姻関係は実質的に破綻しているものの、日本の制度上離婚は成立していない一方で、婚外子が誕生した場合の婚姻費用の取り扱いについて大きな問題になることがある。

 

 その点について、岐阜家裁中津川出張所平成27年(家)第76号では、

非嫡出子に対する扶養義務を果たすために相手方に対する婚姻費用の減額を認めることは、申立人の不貞行為を助長ないし追認するも同然であり、信義誠実の原則に照らし、認められない』とし、

 婚姻費用の算定にあたり婚外子の養育費を考慮しなかった。

 しかしながら、上記審判は即時抗告され、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号(裁判長裁判官 揖斐潔 裁判官 池田信彦 裁判官 片山博仁)では、

 

『重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは信義則に反すると主張するが、婚外子は嫡出子と同様、抗告人から等しく扶養を受ける権利を有するから、上記主張は採用できない』

 

として、婚姻費用の算定にあたり、婚外子は嫡出子と同様に養育費を考慮された。

 

 また、大阪家裁平成26年(家)第1349号(裁判官 姥迫浩司)においては、過去の審判で婚姻費用の算定に考慮されなかった婚外子が、

婚外子の存在を無視したまま婚姻費用分担義務を定めるとすれば、申立人の信義則違反の責任を婚外子のみに負わせる結果となりかねず、婚外子の福祉の観点から相当ではない

と説示し、婚姻費用の算定にあたり婚外子の養育費が考慮された。

 

 一方で、最近の判例平成29年9月14日京都家裁平成29年(家)第1237号、第1238号(裁判官 松井千鶴子)では、

前件審判大阪高裁平成25年(ラ)第676号において、『原審相手方は不貞行為に及びその結果子が出生し、また将来第2子が出生するのであるが、上記経緯による原審相手方の現在の生活状況を考慮するのは相当ではない』とした判断を維持し、

 

申立人が不貞行為に及びその結果子が出生し、別居に至った経緯や申立人の収入を考慮すれば、婚外子第3子が出生したのは本件決定後の事情であったとしても、婚姻費用分担額を減額すべき程度の事情であるということはできない

 

として、岐阜家裁中津川出張所平成27年(家)第76号と同様に、婚姻費用の算定にあたり、3人の婚外子の養育費は一切考慮しなかった。

 

 その審判に対しても、即時抗告されているが、平成29年12月8日大阪高裁平成29年(ラ)第1204号(裁判長裁判官 河合裕行 裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)においても、

 

原審申立人が不貞行為に及んだ結果、上記3名の婚外子が出生したことを含む原審申立人と原審相手方が別居に至った経緯や原審申立人の収入、本件における一切の事情を考慮して算定したものであるから、その判断にあたって上記3名の婚外子の生活費を具体的に考慮しなかったからといって、直ちに上記3名の子らの養育を受ける権利を侵害し、憲法14条1項に違反するとは言えない』

 

として、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号と異なり、原審の判断を維持し、岐阜家裁中津川出張所平成27年(家)第76号と同様に、婚姻費用の算定にあたり、婚外子は不貞行為の結果生まれたことを考慮し、婚外子の養育費を具体的に一切考慮しなかった。

  上記裁判例では、さらに名古屋高裁平成27年(ラ)第442号に相反する判断があるとして許可抗告が提起された(大阪高裁(ラ許第405号)が抗告は許可されず、

また同時に、憲法第14条第1項違反として特別抗告を提起されているが、最高裁平成30年4月9日(平成30年(ク)第242号、第243号)「特別抗告の事由に該当しない」とし、棄却している。

 

 『憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事項の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものである』

 

とは最高裁が度々説示しているが、

 近年になっても婚姻制度においての婚外子の取り扱いについては、依然として嫡出子と同様に扱うべきか否かが定まっておらず、複雑な問題がはらんでいるようだ。

婚外子は嫡出子と同等に扶養を受ける権利がある(名古屋高裁平成27年(ラ)第442号)

 婚外子の存在を理由に婚姻費用減額の申立てをしたところ、審判(岐阜家庭裁判所中津川出張所平成27年(家)第76号)では、信義則違反を理由に婚外子の存在は認められなかったが、

以下の抗告審では婚外子は嫡出子と同等に扶養を受ける権利がある」とし、標準的算定方式において嫡出子、婚外子とも同等に考慮し、婚姻費用の分担額を決定した判例

 一方、大阪高裁平成29年(ラ)第1204号(原審 京都家裁平成29年(家)第1237号、1238号 )では、

原審、抗告審とも、「不貞関係から生じたことを含む一切の事情を考慮して」婚外子の生活費は考慮されていない。

 また、以下名古屋高裁判例に相反することを主張し、許可抗告(平成29年(ラ許)第405号)を申し立てているが、相反する判断はないとして抗告が許可されなかった。

 

名古屋高等裁判所平成28年2月19日決定(平成27年(ラ)第442号)

婚姻費用分担(減額)申立却下審判に対する即時抗告事件

 

原審(岐阜家庭裁判所中津川出張所平成27年(家)第76号)

 

抗告人 A

相手方 B

 

主文

1 原審判を取り消す。

2 抗告人と相手方との間の平成21年〇月〇日に成立した那覇家庭裁判所平成21年(家イ)第〇〇号夫婦関係調整事件の調停条項第2項(3)のうち,平成26年〇月以降に相手方に支払うべき婚姻費用の分担金額を,同月及び同年〇月を月額46万円,同年〇月までの間を月額49万円,同年〇月以降を月額39万円に減額する。

3 手続費用は,原審及び当審を含めて,各自の負担とする。

 

理由

第1 抗告の趣旨

別紙「即時抗告申立書」に記載の通り。

第2 事案の概要

1 事案の要旨

(1)本件は,夫である抗告人(昭和44年〇月〇日生)と妻である相手方(昭和44年〇月〇日生)との間の那覇家庭裁判所平成21年(家イ)第〇〇号夫婦関係調整事件(以下「前件調停事件」という。)において,平成21年〇月〇日,抗告人が,相手方に対し,当事者の別居期間中における婚姻費用の分担金として,毎月末日限り,①平成22年〇月及び同年〇月は月額15万円,②同年〇月は月額35万円,③同年〇月から当事者の同居又は婚姻を解消する月まで月額50万円を支払うとの調停(以下「前件調停」という。)が成立したところ,抗告人が,前件調停の成立後,交際相手との間に生まれた子を養育しているなどとして,相手方に対し,上記③に係る月額50万円の婚姻費用の分担金を月額20万円に減額するように求めた事案である。

(2)原審が,抗告人の申立てを信義誠実の原則に反するなどとして却下したため,抗告人が即時抗告した。

 略語は,特に断らない限り,原審判の例による。

第3 当事者の主張

1 原審における当事者の主張

 次のとおり補正するほかは,原審判「理由」の「第2 申立ての理由等」の2及び3に記載のとおりであるからこれを引用する。

(原審判の補正)

(1)原審判3頁22行目の「前回調停」を「前件調停」に改める。

(2)原審判4頁4行目の「F」を「F」に改める。

(3)原審判4頁5行目の「G」を「G」に改める。

(4)原審判4頁5行目の「H」を「H」に,同行目「I」を「I」に,6行目の「J」を「J」にそれぞれ改める。

2 当審における当事者の主張

 別紙「即時抗告理由書」および同「答弁書」記載のとおりである。

第4 当裁判所の判断

1 当裁判所は,抗告人の分担すべき婚姻費用額を,平成26年〇月及び同年〇月を月額46万円,同年〇月から同年〇月までの間を月額49万円,同年〇月以降を月額39万円と定めた上,前件調停の調停条項第2項(3)をその旨変更するのが相当であると判断する。

 その理由は,次の2以下のとおりである。

2 認定事実

 次のとおり補正するほかは,原審判「理由」の「第2 申立ての理由等」の1に記載のとおりであるから,これを引用する。

(原審判の補正)

(1)原審判1頁22行目の「当庁」を「岐阜家庭裁判所中津川主張所」に改める。

(2)原審判1頁24行目の「申立人は相手方と」の次に「平成9年〇月〇日に」を加える。

(3)原審判1頁26行目の「もうけたが,平成18年〇月に」を次のとおり改める。

 「もうけた。その後,抗告人は,歯科医師(勤務医)として稼働しながら家族とともに〇〇市などで居住していたが,平成17年〇月頃,知人に誘われて〇〇市にて歯科医院を開業することとし,同年〇月,単身で〇〇市に転居し,相手方は同月以降,長男及び二男とともに,相手方の実家である〇〇市にて生活し,平成18年〇月,長男及び二男を連れて,〇〇市に転居し,以後,抗告人と同居するようになった。」

(4)原審判2頁2行目の「訴えるようになり」を「訴えて心療内科に通院するようになり」に改める。

(5)原審判2頁4行目末尾に次のとおり加える。「相手方が居住していた別居先のマンションの賃料月額4万9000円は,抗告人が支払っていた。」

(6)原審判2頁5行目の「同日」の次に「,長男及び二男とともに」を加える。

(7)原審判2頁6行目の「F」を「F」に改め,同行目から7行目にかけての「申立人」から,8行目末尾までを削る。

(8)原審判2頁9行目冒頭から17行目末尾までを次のとおり改める。

「(2)抗告人は,平成21年〇月〇日,相手方との離婚を望み,同人を相手方として,那覇家庭裁判所に対し,前件調停事件の申立てをした。

 前件調停事件において,相手方は抗告人から生活費として月額15万円の支払を受けているほかは収入がなく,抗告人から聞いた年収額2250万円を前提にすると,養育費として月額30万円の支払を希望する旨の答弁書を提出していた。

 前件調停事件において提出された平成20年分の確定申告書の写しおよび給与所得の源泉徴収票によれば,抗告人は,「K」という屋号で歯科医院を経営しており,その事業によって年額1780万8288円(ただし,上記確定申告書における事業所得金額1569万4998円から社会保険料113万6710円を控除し,専従者給与控除260万円及び青色申告特別控除65万円を加算した金額)を得ていたほか,Mから給与所得(源泉徴収票の支払金額欄記載の金額)として年額781万円の支払を受けていた。

 前件調停事件において,相手方は,離婚に応じず,長男及び二男を連れて〇〇で生活し,〇〇への転居費用を抗告人が負担することを希望したことから,抗告人と相手方との間で,平成21年〇月◯日,①当分の間別居すること(前件調停の調停条項第1項),②抗告人の分担する婚姻費用額につき,a 相手方が転居するまでの平成22年◯月及び同年◯月の婚姻費用を月額15万円(同調停条項第2項(1)),b 相手方が〇〇市に転居する同年◯月の婚姻費用を35万円(同調停条項第2項(2)),c 相手方が転居した後の同年◯月以降,同居または婚姻解消の月までの婚姻費用を月額50万円(同調停条項第2項(3))と定め,これを毎月末日限り,相手方名義の通常貯金口座に振り込んで支払うこと,③抗告人は,相手方の〇〇県内への転居に伴う費用に付き,実費額を負担すること(同調停条項第3項)を内容とする前件調停が成立した。」

(9)原審判2頁20行目の「就労困難の状況にある」を「通院治療継続中である」に改める。

(10)原審判2頁22行目冒頭から24行目末尾までを次のとおり改める。

「(4)前件調停成立後の平成22年◯月◯日,抗告人とFとの間の子であるGが出生した。

 抗告人,F及びGは,平成24年◯月◯日,〇〇市内の別のマンションに転居するなどして同居していたが,平成25年◯月◯日,FがGを連れて別のマンションに転居して抗告人と別居した。

 抗告人は,同年◯月◯日,Gを認知し,同年◯月◯日,Fとの間で,抗告人が,Fに対し,同年◯月からGが成人するまでの間の育児費用として,月額15万円を支払うことなどを内容とする「育児費用に関する誓約書」を作成し,同月以降,それを支払っているが,その支払を確認できない期間もある。

 (5)抗告人は,Hと交際し,平成26年◯月頃から同居しており,同年◯月◯日,Hが妊娠していた子(双子)を胎児認知した。同月◯月,抗告人とHとの間の子であるI及びJが出生した。抗告人は,現在も,H,I及びJと同居している。」

(11)原審判2頁25行目の「(5)」を「(6)」に改める。

(12)原審判3頁1行目の「課税される所得金額」から同行目末尾までを次のとおり改める。

 「「事業所得金額」は2218万3934円,「不動産所得金額」は108万0089円,「雑所得金額は2100円である(合計2326万6123円)。」

(13)原審判3頁2行目の「(6)」を「(7)」に改め、3行目の「相手方は」から12行目末尾までを次のとおり改める。

 「相手方は,平成23年◯月◯日,婚姻費用が減額されたことを知り,抗告人に対して,前件調停どおり支払ってほしい旨の電子メールを送信したが,抗告人はこれに応じなかった。

 (8)抗告人は,平成26年◯月◯日,婚姻費用の減額を求める調停を岐阜家庭裁判所多治見支部に申し立て、同調停事件は,岐阜家庭裁判所中津川出張所に回付された(同出張所平成26年(家イ)第〇〇号婚姻費用分担(減額)調停申立事件,以下「本件調停事件」という。)。

 (9)相手方は,同年◯月◯日,抗告人を債務者とする過去の婚姻費用に関する債権差押命令(那覇地方裁判所平成26年(ル)第〇〇号)の発令を受けた。

 これに対し,抗告人は,同年◯月◯日,上記差押命令の債務名義である前件調停について,那覇家庭裁判所に請求異議訴訟(同裁判所(家へ)第〇〇号。以下「本件請求異議訴訟」という。)を提起した。

 (10)本件調停事件は,平成27年◯月◯日,調停不成立となり,審判手続に移行した。

 (11)那覇家庭裁判所は,同年◯月◯日,本件請求異議訴訟につき,抗告人の請求を棄却するとの判決を言い渡した。」

 3 検討

 (1)事情変更の有無について

 ア 婚姻費用の分担額の減額は,婚姻費用分担の程度若しくは方法について協議または審判があった後,事情に変更を生じたときに認められるものであるところ(民法880条参照),上記「事情の変更」とは,協議又は審判の際に考慮され,あるいはその前提とされた事情に変更が生じた場合をいい,協議又は審判の際に既に存在し,判明していた事情や,当事者が当然に予想し得た事情が現実化したにとどまる場合を含むものではない。

 イ 上記2の認定事実(補正して引用した原審第2の1。以下に同じ)によれば,抗告人は,前件調停成立後に出生したG,I及びJを認知し,その扶養義務を負う未成年の子の数に変更が生じたことが認められ,これは,婚姻費用の分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するものである。

 これに対し,相手方は,重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を行旅するのは,信義則に反すると主張するが,G,I及びJは,長男及び二男と同様,抗告人から等しく扶養を受ける権利を有するから,上記主張は採用できない。

 また,相手方は,Fが,前件調停時に既にGを妊娠していた可能性があるから,同人の出生が,抗告人に予見し得た事情にとどまると主張するが、Gは平成22年◯月◯日出生したものであり、前件調停が成立した平成21年◯月◯日の時点で,抗告人が,Fの妊娠を認識していたとはいえないから,上記主張は採用できない。

 したがって,抗告人がG,I,およびJに対する扶養義務を負うことを前提に,その負担すべき婚姻費用を算定すべきである。

 ウ また,上記2の認定事実によれば,前件調停が成立した平成21年◯月◯日当時,長男は10歳,二男は7歳であったことに加え,相手方が,心療内科に通院していたことから,前件調停においては,相手方が無収入であることが前提とされていたものと推認される。

 しかし、本件申立てがされた平成26年◯月◯日の時点では,長男は14歳,二男は12歳であり,長男及び二男を養育する必要から,相手方の就労が困難であるとは言えない。また、上記2の認定事実によれば,相手方は,精神疾患が平癒しているとはいえないものの(乙4,11),不定期ながら託児の仕事を請け負って収入を得ており,稼働能力がないとは言えない。

 これは,前件調停の成立後,当事者が前提としていた相手方の稼働能力の点に変更が生じたものであるから,婚姻費用の分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するものである。

 そして,相手方は,精神疾患が平癒したとはいえないこと,抗告人と同居期間中は基本的に専業主婦であったこと,平成26年◯月の本件申立て当時44歳であったことを考慮すると,相手方には,平成26年賃金構造基本統計調査報告第3巻第13表「短時間労働者の年齢階層別1時間あたり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」産業計・企業規模計・女子40~44歳の年収額119万9582円(1時間当たりの所定内実労働時間5.4時間✕実労働日数17.5日✕12か月+年間賞与等3万9500円)の半額程度(60万円)の収入を得られる稼働能力があることを前提に,抗告人が分担すべき婚姻費用を算定すべきである。

 エ その他,抗告人は,上記事情の変更に該当する事由として,①相手方との別居期間が長期化していること,②前件調停時,月額50万円の婚姻費用を分担する期間を限定したこと,③抗告人が自営業者であるため,その収入が変動しうることを主張する。

 しかし,上記①については,上記2の認定事実によれば,前件調停において,相手方は抗告人との離婚に応じないまま,その後,長男および二男を伴って〇〇市に転居していることが認められ,その後,別居解消について協議されたことをうかがわせる事情もないから,別居期間が長期化することは,前件調停事件係属時に当事者双方が予見し得た事情といえる。

 また,上記②は,それ自体,前件調停の成立後に事情が変更したことをいうものではない。

 さらに,上記③については,抗告人は前県調停事件係属前から歯科医院を経営する自営業者であり,前件調停成立後,その経営状態に大きな変更があったことを認めることはできず,上記2の認定事実によっても,抗告人の収入に大きな変動があったとは認められないから,前件調停によって合意された婚姻費用額を減額すべき程度に,事業所得金額の変動が生じたとはいえない。

 したがって,抗告人の上記①ないし③の主張はいずれも「事情の変更」に該当する事由とは言えず,採用できない。

 (2)婚姻費用減額の始期

 上記2の認定事実によれば,抗告人は,平成26年◯月に本件申立てをしているところ,平成22年◯月◯日にGが出生し,平成25年◯月◯日にGを認知してることが認められるから,婚姻費用減額の始期は平成26年◯月とするのが相当である。

 (3)婚姻費用額の算定

 抗告人が分担すべき婚姻費用の額を算定するに当たっては,いわゆる標準的算定方式及び標準算定表(判例タイムズ1111号285頁)に依拠して検討するのが相当である。

 ア 抗告人の総収入及び基礎収入

 上記2の認定事実及び証拠(甲24)を前提にすると、抗告人の平成26年度の総収入は,同年度の確定申告書に記載された事業所得金額,不動産所得金額および雑所得金額の合計2326万6123円から,社会保険料103万7710円を控除し,青色申告特別控除額65万円を加算した2287万8413円となる。

 上記総収入額は,標準的算定方式における自営業者の総収入額1409万円を約800万円上回るものであるところ,その基礎収入割合を42%とするのが相当と判断する。そうすると,基礎収入は960万8933円(2287万8413円✕0.42)となる。

 この点,相手方は,抗告人がNに加入しておらず,接待交際費が発生するはずがないこと,Iに対する仕入原価及び広告宣伝費が水増しされてHへの生活費に充てられていることを理由に,これら費用を抗告人の総収入に加算すべきであると主張するが,一件記録上,抗告人に接待交際費が生じていないこと,上記仕入原価と広告宣伝費が水増しされてHの生活費に充てられていることを認めることはできず,上記主張は採用できない。

 イ 相手方の総収入及び基礎収入

 上記3(1)ウにおいて説示したとおり,相手方の平成26年度の総収入(給与所得)は60万円であり,その基礎収入割合を42%とするのが相当であるから,基礎収入は25万2000円(60万円✕0.42)となる。

 ウ 生活費指数等

(ア)相手方は、平成26年◯月の時点において,長男(平成11年◯月◯日生)及び二男(平成14年◯月◯日生)を養育しており,抗告人が分担すべき婚姻費用額を算定するに当たり,抗告人及び相手方の生活費指数をいずれも100,長男の生活費指数を平成26年◯月及び同年◯月は55,同年◯月以降は90,二男の生活費指数を55とするのが相当である。

(イ)また,抗告人は,平成26年◯月の時点において,G(平成22年◯月◯日生,平成25年◯月◯日認知)を養育する義務を負っているところ,上記2の認定事実によれば,抗告人が,Fとの間で,平成24年◯月からGが成人するまでの間,養育費用として,月額15万円を支払うことを合意し,同月以降支払っているが,その支払を確認できない期間もあること,上記合意の際,抗告人が,相手方に対する婚姻費用の分担額をどの程度考慮したかは不明であることから,これをそのまま抗告人の基礎収入から控除するのは相当ではない。

 したがって,Gの生活費指数は,標準的算定方式における15歳未満の子の生活費指数55を,抗告人の基礎収入額と,Gの母であるFの基礎収入額とで按分するのが相当である。

 そして、Fが昭和51年◯月生まれの女性であり,その稼働能力に特段の問題があることをうかがわせる証拠もないから,Gが平成26年◯月当時,3歳であることを考慮しても,平成26年賃金構造基本統計調査報告第3巻第13表「短時間労働者の年齢階級別1時間当り所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」産業計・企業規模計・女子35歳~39歳の年収額125万8224円(1時間当たりの所定内給与額1058円✕1日あたりの所定内労働時間5.5✕実労働日数17.3✕12か月+年間賞与5万0200円)程度の総収入を得られる稼働能力があると認めるのが相当である。そしてその基礎収入割合は41%とするのが相当であるから,Fの基礎収入は,51万5871円(125万8224円✕0.41。1円未満切り捨て。以下同じ)である。

 したがって,Gの生活費指数は,次の計算式のとおり52となる。

(計算式)

 55✕960万8933円/(960万8933円+51万5871円)=52

(ウ)さらに,抗告人は,平成26年◯月以降,I及びJを養育する義務を負っているところ,同人らについても,Gと同様,標準的算定方式における15歳未満の子の生活費指数55を,抗告人の基礎収入額と,I及びJの母であるHの基礎収入額とで按分するのが相当である。

 そして,Hは,Lの代表取締役であり,役員報酬として年額240万円の支払いを受けており,その基礎収入割合を39%とするのが相当であるから,Hの基礎収入は,93万6000円(240万円✕0.39)である。

 したがって,I及びJの生活費指数は,次の計算式のとおりそれぞれ50となる。

(計算式)

 55✕960万8933円/(960万8933円+93万6000円)=50

 エ 婚姻費用額の算定

 上記アないしウを前提に,婚姻費用額を算定すると,次のとおり,平成26年◯月および同年◯月が45万5702円,同年◯月から同年◯月前の間が月額48万6121円,同年◯月以降が月額38万4085円となる。

(ア)平成26年◯月及び同年◯月

 相手方が養育している長男が14歳(生活費指数55),二男が12歳(同55)であり,抗告人が養育する義務を負っている認知している子はG(同52)のみであるから,相手方に割り振られるべき婚姻費用は,次の計算式のとおり,572万0430円であり,ここから相手方の基礎収入25万2000円を差し引くと,抗告人が支払うべき婚姻費用は,年額546万8430円(月額45万5702円)である。

 (計算式)

 (960万8933円+25万2000円)✕(100+55+55)/{(100+55+55)+(100+52)}=572万0430円

 572万0430円ー25万2000円=546万8430円

 546万8430円÷12か月=45万5702円

(イ)平成26年◯月から同年◯月まで

 相手方が養育している長男が15歳(生活費指数90),二男が12歳(同55)であり,抗告人が養育する義務を負っている認知している子はG(同52)のみであるから,相手方に割り振られるべき婚姻費用は,次の計算式のとおり,608万5462円であり,ここから相手方の基礎収入25万2000円を差し引くと,抗告人が支払うべき婚姻費用は,年額583万3462円(月額48万6121円)である。

 (計算式)

(960万8933円+25万2000円)✕(100+90+55)/{(100+90+55)+(100+52)}=608万5462円

 608万5462円ー25万2000円=583万3462円

 583万3462円÷12か月=48万6121円

(ウ)平成26年◯月以降

 相手方が養育している長男が15歳(生活費指数90),二男が12歳(同55)であり,抗告人が養育する義務を負って認知している子はG(同52),I及びJ(いずれも生活費指数50)であるから,相手方に割り振られるべき婚姻費用は,次の計算式のとおり,486万1023円であり,ここから相手方の基礎収入25万2000円を差し引くと,抗告人が支払うべき婚姻費用は,年額460万9023円(月額38万4085円)である。

 (計算式)

(960万8933円+25万2000円)✕(100+90+55)/{(100+90+55)+(100+52+50+50)}=486万1023円

 486万1023円ー25万2000円=460万9023円

 460万9023円÷12か月=38万4085円

 (4)抗告人が分担すべき婚姻費用額

 以上のほか,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,抗告人が分担すべき婚姻費用額を平成26年◯月及び同年◯月を月額46万円,同年◯月から同年◯月までの間を月額49万円,同年◯月以降を月額39万円とするのが相当である。

 4 まとめ

 以上の次第で,前件調停の調停条項第2項(3)を上記3(4)の通り変更するのが相当である。

第5 結論

 よって,抗告人の本件申立てを却下した原審判を取り消し,前件調停の調停条項第2(3)を上記第4の4の趣旨に変更することとして,主文のとおり決定する。

裁判長裁判官 揖斐潔

裁判官 池田信彦

裁判官 片山博仁

 

婚姻費用分担にみる婚外子に対する合理的な差別

 京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号、第1238号では、前件審判より3年以上経過し、婚外子の誕生を理由として、婚姻費用の減額を申し立てたところ、相手方は不貞行為の相手との婚外子の誕生を理由とする減額請求は信義則に照らし認められないと主張している。

 そして、審判、および、抗告審(大阪高裁(ラ)第1204号)においては、相手方の主張を容認し、あらたな婚外子の誕生も、既に小学生、幼稚園の婚外子の生活費も、婚姻費用の算定には考慮されなかった。

 信義則違反を主張する相手方は、保育園の園長であり、すべての子どもの福祉、権利を尊重する立場である。

 そのような立場から、信義則違反を婚外子の責任に帰する主張、そして、それを容認する裁判所の現状から、日本においては婚外子の差別的取り扱いについては、合理的理由のあるものとみなされているといえよう。

 

 

即時抗告理由書(平成29年大阪高裁(ラ)第1204号)

 

原審判

京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号婚姻費用分担(減額)申立事件(甲事件)

京都家庭裁判所平成29年(家イ)第412号婚姻費用分担(増額)申立事件(乙事件)

 

抗告人 X

相手方 Y

抗告理由書(1

 

                 

(1)憲法14条第1項違反 非嫡出子個人の権利を保障すべきである

 原審にて『申立人はAとの間に3人の子があり、いずれも認知していることから、3人の子に対する扶養義務があることは否定できない』と判示されているのは相当である。その非嫡出子に対する扶養義務は、憲法14条第1法の下の平等に基づき、また後述するが、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号においても、「婚外子は嫡出子と同様に抗告人から等しく養育を受ける権利を有し」と判示されており、嫡出子に対するものと同等の生活保持義務であることは明白である。

 また、抗告人主張書面(2)1011頁でも述べたが、非嫡出子が不貞関係のもと誕生したとしても、民法9004号ただし書を憲法141項に違反していたとする最高裁判所平成2594日決定(最高裁判所平成24年(ク)第984号)にて判示されているように、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」とされており、本件においても抗告人と同居する非嫡出子個人の権利は保障されるべきである。

 しかしながら、原審判による標準的算定方式による婚姻費用の算定において、嫡出子の生活費を考慮する一方、非嫡出子の生活費が一切考慮されていない。その算定結果は、申立人収入1734万円に対する基礎収入率は0.33、相手方収入475万円に対する基礎収入率を0.38(甲第38号証、甲第39号証)であるので、相手方世帯に按分される基礎収入はおよそ640万円、抗告人と3人の非嫡出子の抗告人世帯に按分される基礎収入はわずかに113万円である(甲第46号証)。

 よって、原審判によるこのような婚姻費用分担金の算定は、抗告人世帯の非嫡出子にとって極めて過酷で不公平であり、非嫡出子の子ども個人としての権利が守られておらず、抗告人から嫡出子と同等の生活保持義務を受ける権利を明らかに侵害するものであり、憲法14条第1法の下の平等に違反しており不当である

 

(2)3子出生は婚姻費用分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当する。

 妻でない女性との間に子が出生したことによりその扶養義務を果たすため一度調停にて決まった婚姻費用の分担減額申立をした裁判例名古屋高裁平成27年(ラ)第442号)では、婚外子は嫡出子と同様に抗告人から等しく養育を受ける権利を有し、扶養義務を果たすべき非嫡出子の誕生は前件調停の際に予測し得た事情等ではなく、前件調停後成立後抗告人が扶養義務を負う未成年の数に変更が生じたことが認められ、これは婚姻費用の分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するとされた。

 本件においても、3子出生は平成2915日であり、平成25年大阪高裁決定時に予測し得た事情ではない。よって、遅くとも平成291月には、第3子の誕生により、平成25年大阪高裁決定成立後、抗告人が扶養義務を負う未成年の数に変更が生じたことが認められ、上記名古屋高裁抗告決定と同様に婚姻費用分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するとされるべきである。

 また、原審判は「申立人が不貞行為に及びその結果子が出生し、別居に至った経緯」を考慮し、第3子出生について婚姻費用分担額を減額すべき事情であるとは言えないとした。しかし、上記最高裁決定(最高裁判所平成24年(ク)第984号)における判示と同様に、抗告人の不貞行為は非嫡出子に何ら責任がなく、自ら選択修正できない事項を理由として、その子の嫡出子と同等の生活保持義務を受ける権利を侵害し不利益を与えることにほかならないのであり許されるものではなく、原審判による「第3子出生について婚姻費用分担額を減額すべき事情であるとは言えない」との判示は憲法14条第1法の下の平等に反し不当である。

 さらに、 名古屋高裁平成27年(ラ)第442号においても、「 相手方は、重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは、信義則に反すると主張するが、婚外子は、長男及び二男と同様、抗告人から等しく扶養を受ける権利を有するから、上記主張は採用できない」とされており、本件においても第3子出生は「婚姻費用分担額を減額すべき事情」とされるべきである。

 また、「申立人の収入、Aの稼働能力を考慮し、第3子の出生が婚姻費用を減額すべき程度の事情ではない」と判示されたが、抗告人の収入、Aの稼働能力は、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号抗告決定と同様に標準的算定方式の中で客観的合理的に考慮され婚姻費用の分担に反映されるべきものであるから、不当である。

 なお、相手方主張書面(2)に基づき、原審にてAは看護師の資格を有すると事実認定がなされているが、Aは看護師ではなく、看護資格等の国家資格を有しているわけではない。また、抗告人主張書面(2)5頁でも述べたが、Aは現在5歳、3歳、0歳の三人の幼児を育てており、到底職につける状況ではなく、無職、無収入であり(甲第23号証)、現状では稼働能力はないと認めるべきである。

 すなわち、遅くとも平成292月には、第3子の出生によって、婚姻費用分担額を減額を認めるべき「事情の変更」は生じており、原審の抗告人の婚姻費用分担金の減額の申立に理由がないというのは不当である。

 

3)前審判、抗告審後の重大な事情の変更

相手方収入の増加は、非嫡出子第一子の生活費を考慮すべき重大な事情の変更である。

 京都家裁審判(平成24年(家)第1407号)にて『原審相手方には非嫡出子がいるが、同子出生の経緯や原審申立人(Y)の収入等を考慮し、同子の生活費を考慮しない』と判示され、申立人とAとの間の非嫡出子第一子は、既に元の審判・決定による婚姻費用決定において考慮されていた事実ではあった。

 しかしながら、相手方は審判当時は実家保育園で非常勤職員として勤務し、平成25年大阪高裁決定時、年収855109円と認定されているが、その後同保育園にて常勤職員として勤務しており、平成28年度の年収は475269円にも至っている(乙第12号証)。すなわち、婚姻費用決定の前提とされた相手方(平成25年大阪高裁決定では原審申立人)の稼働能力に重大な変更が生じており、婚姻費用を減額する「事情の変更」に該当するのは明らかである。また、後述するが、相手方は平成29年になり実家の経営する保育園施設長(園長)に就任しており、提出された源泉徴収票の年収を更に大きくうわまるのであり、さらに稼働能力に変更が生じていることからも、「事情の変更」に該当する。

 また、「原審申立人(Y)の収入等を考慮し、同子の生活費を考慮しない」と判示されているが、相手方の稼働能力、収入に変更があったことは、審判、決定においての「同子の生活費を考慮しない」という判断の前提となる「事情の変更」にも該当し、その変更も認められうるものである。すなわち、相手方の稼働能力の大幅な変更は、婚姻費用の分担額に非嫡出子第一子の生活費を考慮することを認めるべき「事情の変更」に該当するとされるべきである。

 

非嫡出子第二子の出生は婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」である。 

 また、大阪高裁抗告審にて「原審相手方は不貞行為似及びその結果子が出生し、また将来2子が出生するというのであるが、上記経緯による原審相手方の現在の生活状況を考慮するのは相当ではない」と判示されている。

 平成25830日大阪高裁決定時には、第二子は誕生しておらず、現実に生まれていない子に対する扶養義務等を考慮し『現在』の婚姻費用分担額を算定することは現実的ではない。すなわち、大阪高裁決定時には、『現在の』婚姻費用の算定にあたり、『未来』に誕生予定の第二子の生活費を考慮するのは相当ではないと判示されたに過ぎず、第二子誕生後の『将来の生活状況』において、その子の生活費を考慮しないという判示ではない。すなわち、平成25年大阪高裁決定時には、抗告人とAとの間の第二子の存在は将来に予見された事情であっても、婚姻費用の算定において「協議又は審判の際に考慮され、あるいはその前提とされた事情」ではない

 よって、第二子は平成2575日申立人が胎児認知し、平成251028日に誕生しているが、申立人は第二子に対して、扶養義務を負っており、平成25年大阪高裁決定の後に、申立人が扶養義務を負う未成年者の子の人数は「考慮され、前提ないし基準となった事情」から変更が生じており、婚姻費用の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するのである。

 

非嫡出子の成長は、婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」に該当する。

 また、抗告人主張書面(2)4頁でも述べているが、申立人と同居する非嫡出子は、第一子が5歳、第二子が3歳となり、現在幼稚園に通園中であり、第一子は来年には小学校に進学する。その教育費だけでも月78万円の費用を要し(甲第16号証、17号証、18号証)、更にはその子どもたちの生活費も相当に必要となっている。原審判では、嫡出子の年齢に応じて子に係る費用の増加を考慮されているのであるから、非嫡出子の成長に応じた費用の増加も当然に考慮されるべきである。すなわち、申立人と同居する非嫡出子の成長による生活費、教育費の増大が婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」に該当することも明らかである。 

 

相手方現状に関する新たな事実

 抗告人主張書面で既に述べているが、相手方は遅くとも平成254月には、父親が理事長であった社会福祉法人○○○○○、常勤保育士として勤務を開始している。

 平成29年○月○日抗告人はインターネットによって相手方の実父がそれまで病気療養中であり、平成29年○月○日に死去されていることを初めて知った(甲第48号証)。またそれに伴い、○○保育園ホームページより相手方が社会福祉法人○○○○○の理事となっていることもあわせ知った(甲第49号証)。そこで、抗告人は○○市役所に問い合わせ、相手方が、現在○○保育園の施設長(園長)であることを確認した。

 平成28年度の半ばまでは、Yの実父が社会福祉法人○○○○○の理事長、同法人○○○保育園の施設長であり、同法人○○保育園園長は相手方の実母であったが、現在は、法人理事長、○○○保育園園長はYの実母である。相手方は、平成28年後半ないしは平成29年初めには保育園の施設長になっていることより、本件にて提出された平成28年度の源泉徴収票の収入より大幅な収入の増加がある。

 厚生労働省による『平成29年度幼稚園・保育所等経営実態調査』によると、私立保育所施設長の平均月収は、545,229円であり(甲第50号証)、年収に換算するとおよそ650万円である。相手方実母が理事長、相手方が理事であること、相手方はわずか数年の勤務経験にて施設長に就任していることより、相手方はいわゆる同族経営社会福祉法人の経営者かつ施設長である。また、主張書面(1)p.13で述べたが、国民生活基礎調査による保育士の平均年収が3,767,000円である一方で、相手方の平成28年度の年収は475万円であり、率にして25%以上も高いことより、相手方の保育園施設長の年収は650万円の25%増しの800万円程度と考えられる。また、抗告人はYの実父より、生前に保育園園長としての源泉徴収票を見せて頂いたことがあったが、その時の収入は900万円前後、その他牧師としての給与200万円〜300万円程度であったと記憶しており、相手方の施設長としての年収は800万円程度と認定するのが妥当であり、少なくとも私立保育園施設長平均年収650万円と認定すべきである。

 また、このような相手方の大幅な収入の増加は、平成24京都地裁審判後に生じた「申立人(Y)の収入等を考慮し、同子の生活費を考慮しない」という判断の変更を認め、婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」に該当するのも明らかである。

 

4)「事情の変更」の重要性 非嫡出子の嫡出子と同等の生活保持義務を受ける権利

 未成熟の子に対する親の扶養義務は生活保持義務であり、法の下の平等を鑑みて、嫡出子、非嫡出子であることを問わず、親との共同生活であるか否かなどを問わず等しいことは議論の余地はない。すなわち、抗告人は、同居する非嫡出子に対して、相手方と同居する嫡出子と等しく生活保持義務を負っている。

 そこで、抗告人及び相手方の現在の収入を鑑み、抗告人、扶養義務のある未成熟子、相手方が各々生活保持義務を果たされるべく、いわゆる標準的算定方式(判例タイムズNo.1111 200341)を用いて、婚姻費用を試算したところ、申立人の現状での婚姻費用の分担額はおおよそ月額18万円〜20万円となる(甲第40号証の1)。

 上記の試算結果は、大阪高裁決定(乙第2号証の2)の基本的月額31万円から大きく乖離している。すなわち、標準的算定方式の妥当性安定性を鑑み、抗告人の収入の増加を加味しても、相手方の収入の増加、及び申立人と同居の非嫡出子の誕生及び成長という『事情の変更』は「本件の決定額を維持することがおよそ相当ではない」極めて重大なものであるのは明らかである。

 

5)標準算定方式により3人の非嫡出子の生活費を考慮し、婚姻費用分担額を決定すべきである。

 以上より、相手方の稼働能力の変更、申立人が扶養すべき未成年者の数の増加、非嫡出子の成長という、婚姻費用分担額の減額を認めるべき重大な「事情の変更」は明らかに存在しており、民法880条に基づき、婚姻費用分担金の減額が認めるられるべきである。 

 すなわち、平成292月以降は、抗告人世帯、0歳〜14歳の子3人、相手方世帯15歳〜19歳の子1人、0歳〜14歳の子2人を前提として、また、平成299月以降は、抗告人世帯、0歳〜14歳の子3人、相手方世帯15歳〜19歳の子2人、0歳〜14歳の子1人を前提として、標準的算定方式により婚姻費用分担金を算定するのが妥当である。

 また、 上述の名古屋高裁平成27年(ラ)第442号との判示と同様に、標準的算定方式の理論(判例タイムズNo.11112003.4.1)(甲37号証)に基づいて算定した本件の婚姻費用分担額については、抗告人主張書面(2)6頁〜9頁、主張書面(4)1頁〜4頁、甲第28号証、甲第40号証で示した。

 さらに、相手方は平成29年初め頃に保育園園長に就任という職業的立場が大きく変わり、本件において提出されている源泉徴収票の年収より大幅な年収の増加があるのだから、それを基準として婚姻費用を算定するのが妥当である。そこで、相手方年収650万円、それに対する基礎収入率0.36として、婚姻費用を再算定した(甲47号証)。

 

抗告人基礎収入 1734万円×0.33≒572万円

相手側基礎収入 650万円×0.36≒240.5万円

 

.20172月〜20178

(抗告人の基礎収入)×(相手方世帯の生活費指数の合計)÷(生活費指数の総計)−(相手方の基礎収入)

=(572+240.5×100+90+55+55÷100+90+55+55+100+55+55+55

240.5

  ≒191万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 159,000

 

.20179月〜20199月(あるいは長男成熟)

=(572+240.5×100+90+90+55÷100+90+90+55+100+55+55+55

240.5

  ≒213.3万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 178,000

 

ウ.201910月(あるいは長男成熟)〜20228月(あるいは二男成熟)

=(572+240.5×100+90+90÷100+90+90+100+55+55+55

240.5

  ≒177.0万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 148,000

 

エ.20229月(あるいは二男成熟)〜20246月(あるいは三男成熟)

=(572+240.5×100+90÷100+90+100+55+55+55)−240.5

  ≒98.9万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 82,000

となり、抗告の趣旨の通り、婚姻費用分担金の減額をすべきである。

 

6)本件決定後、特別経費月額5万円を減額する事情の変更

相手方の可動能力の大幅な変更と相手方の追加経費の負担

 相手方は抗告人と別居後、実家が経営する社会福祉法人で勤務するようになり、平成29年になり保育園施設長に就任しており、平成25年大阪高裁決定後に大幅な稼働能力の変更があり、特別経費を減額すべき「事情の変更」に該当する。

 平成25年大阪高裁抗告決定では、教育費としての追加経費5万円は相手方の収入が少なく、追加経費を仮に抗告人と相手方の収入で按分してもないに等しく、相手方は特別経費に対する負担を一切していない。しかし、平成25年抗告決定以降、相手方の稼働能力に大幅な変更があり、追加経費を按分し相手方も上乗せの教育費を負担すべきである。

 教育関係費としての追加経費について、相手方は主張書面(1)(2)において、抗告人と相手方の総収入ないしは基礎収入によって按分しているが、阪高裁平成26年(ラ)第595号では、『(超過教育関係費は、)抗告人及び相手方がその生活費の中から捻出すべきものである。そして、標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資と為し得る金額が同額になることに照らして、上記超過額を抗告人と相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である。』と、超過の教育費を義務者、権利者ともに等しく負担することが判示されており本件においても追加経費については、少なくとも抗告人、相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である。

 

別居後の経緯と抗告人の教育費の負担

 標準的算定方式による教育費の算定において、平均年収に対する公立学校の教育費の割合を考慮し、生活費指数に組み入れられたものであり、そこに含まれる教育費は、公立学校に関する学校教育費ではない。現実に、世帯が平均年収以下であれば、公立学校に関する教育費以下しか含まれておらず、平均年収以上であれば、それ以上の教育費が含まれることになる。標準的算定方式では、公立学校の教育費を利用して教育費を指数化している、すなわち教育費以外の生活費に対して生活扶助額を指数化するのと同様の構造であって、標準的算定方式による生活費は生活保護水準の生活費しか含まれていない訳ではないのと同様に、教育費は公立学校に関する学校教育費ではない。それによる教育費は教育費以外の生活費と同様に世帯収入に応じた標準的な教育関係費であり、標準的算定方式によって算定された養育費、婚姻費用は、教育関係費を含む世帯収入に応じた標準的な生活費とするのが妥当である。

 相手方は「私立学校への進学については、両親の学歴、出身校やその職業、収入、社会的地位等を総合考慮して負担が判断されるべき」と主張するが、抗告人は標準的算定方式による婚姻費用分担金により相手方に対して収入に応じた標準的な教育費を十分に支払っているといえる。

 また、相手方も自認するように別居後に数年間にわたって、相手方は子どもたちの進路について抗告人に相談することも報告することも一切なかったのだから、そのことは大阪高裁決定後に生じた特別経費を減額すべき重大な「事情の変更」に該当するのである。

 

相手方主張の教育費の増大

 相手方は教育費の増加をふまえて、婚姻費用の増額を主張するが、原審において、「この年齢に応じて子に係る費用が増加することについては、前記(2)における額にて既に考慮されており、これを超えて増額を認めることが相当な事情ということはできない」という判示は正当である。

 そもそもその教育費増額の主張は、抗告人が平成292月に婚姻費用減額申立調停を行った後に、それに応じる形で婚姻費用増額申立は行われている。しかしながら、長男が私立○○高等学校、二男が○○高等学校附属中学に進学したのは、平成274月である。また、三男は現在小学6年生であり、小学校に進学したのは別居後の平成24年4月である。よって、相手方の主張する教育費の増額の時期は概ね平成274月であり、平成292月前後において相手方が主張するような教育費の増額の事由は生じていない。すなわち、その経緯から相手方の教育費の増額を主張しているものの、真にはその必要性は乏しいものであることは明白である。

 

抗告人と同居の非嫡出子の教育費 非嫡出子の等しく教育を受ける権利

 非嫡出子のうち第1子は5歳、第2子は3歳であり、嫡出子と同様に私立の幼稚園に通園している。その教育費は、主張書面(2)4頁、甲第18号証甲第19号証に示したが、月額78万円に上っている。抗告人と同居の非嫡出子の教育費は、その生活費が考慮される場合において標準的算定方式によって同等に按分されたとしても、それに含まれる教育費を超えている。

 しかしながら、その教育費は抗告人世帯のその他の生活費を削減し捻出すべきものであり、相手方と同居する嫡出子の過分な教育費についても、相手方がその世帯の生活費から捻出するべきである。相手方の標準的算定方式を超える過分な教育費を申立人に負担させることは、申立人世帯の子どもの負担にもつながるのであり、非嫡出子の嫡出子と同等の生活を送る権利、教育を受ける権利を害するものであって、憲法第14条第1項法の下の平等に反しており、不当である。

 

小括

 以上より、平成25年大阪高裁の決定後、相手方は保育園の施設長にもなり稼働能力に大幅に変更があったこと、数年間に渡り相手方は子どもの進学について抗告人に相談も報告も一切行っていないこと、また、抗告人が扶養すべき未成年の非嫡出子は増加し、成長していることは、本件決定のおいて考慮された特別経費月額5万円を減額するべき「事情の変更」に該当し、少なくとも追加経費を相手側も負担すべきであり、原審判による特別経費月額5万円を抗告人が負担するのは不当である。

以上

 

 

 

抗告人 X

相手方 Y

抗告理由書(2)

 

(1)緒語

 抗告人は、抗告理由書(1)の(1)(1頁から2頁)にて、婚姻費用の分担において、合理的な根拠のない非嫡出子に対する差別的取扱いを容認するにほかならない原審の判断は、憲法14条第1項に違反していることを主張した。また、原審における婚姻費用の算定結果が(甲第46号証)、非嫡出子に著しく不利益を与える差別的取り扱いといわざるをえず、「本件の決定額を維持することがおよそ相当ではない場合」であることも明白であることを示した。

 ところで、婚姻費用分担調停、審判、決定がなされたあと、『事情の変更』が生じた際には、民法880条の類推より、その変更をなすことができるとされる(東京高裁平成1697日決定)が、東京高裁平成261126日決定(平成26年(ラ)第1512号)によると「審判確定後の事情の変更による婚姻費用分担金の減額は、その審判が確定した当時には予測できなかった後発的な事情の発生により、その審判の内容をそのまま維持させることが一方の当事者にとって著しく酷であって、客観的に当事者間の衡平を害する結果になると認められるような例外的な場合に限って許されるというべきである」とされている。

 本件審判では、前回の婚姻費用分担申立事件においての京都家庭裁判所平成25514日審判(平成24年(家)第1407号)(以下「前審判」という)および、大阪高裁平成25830日決定(平成25年(ラ)第676号)(以下「前回抗告決定」という)にて判示された、「婚姻費用の分担において非嫡出子を考慮しない」という判断を維持している。そのため、前審判、前回抗告決定の際に、既に抗告人から胎児認知をされ誕生していた婚外子第1子について、「事情の変更」はないとしている。また、婚姻費用のうち子どもの費用、養育費はその定義より、未成熟子に対する費用であるが故、出産が予定されていても胎児に対して義務は発生せず、一般的に婚姻費用分担額において考慮せず(東京高裁昭和63年9月14日決定、宮崎家裁延岡支部昭和55年12月13日審判)、出産後に考慮すべきである事情とされるが、前回抗告決定時に胎児であった婚外子第2子の誕生についても、その存在は考慮されていたとして、事情の変更はないとしている。さらに、前回抗告決定時に予測されたものではない婚外子第3子についてすら、「婚姻費用分担額を減額すべき程度の事情の変更ではない」とし、その結果、原審では婚姻費用の分担において、3人の婚外子の存在、生活費は一切考慮されていない。

 抗告人は抗告理由書(1)の(2)(2頁から4頁)において、本件審判について名古屋高裁平成28219日決定(平成27年(ラ)第442号)と矛盾しており不当であることを主張した。また、抗告理由書(1)の①(4頁から5頁)において、前回抗告決定時に比して相手方の稼働能力が変更になっていることは婚外子第1子を考慮する事情の変更であると主張し、さらに抗告理由書(1)の②(5頁から6頁)において、婚外子第2子は前回抗告決定時胎児であり、その存在は将来に予見されたものであっても婚姻費用の算定において協議または考慮され前提とされた事情ではなく、その子の誕生は婚姻費用を減額を認める事情の変更であると主張した。

 以下の(2)においては、本件審判において前審判、前回抗告決定を維持する判断について、大阪家裁平成26年(家)第1349号に対する審判を検討し、また②憲法14条第1項、第98条、および最高裁判所大法廷平成24年(ク)第984号に対する決定を鑑み、誤りであることを述べる。

 また、特別経費としての超過教育関係費について、抗告人は抗告理由書(1)の(6)①、②(10頁から12頁)において、相手方の稼働能力に大幅な変更があること、別居後子どもの進路については相手方だけで判断し決定していることが、前回抗告決定時の特別経費を減額すべき「事情の変更」であり、上記の経緯、大阪高裁平成26年(ラ)第595号に対する決定、および憲法第14条第1項法を鑑み、抗告人が特別経費としての超過教育関係費費を負担するのは不当であると主張した。

 以下の(3)では、①大阪高裁平成26年(ラ)第595号に対する決定および、②標準的算定方式の合理性を是認した最高裁判所平成18年4月26日決定、および憲法第14条第1項を鑑み、原審においての特別経費としての超過教育費の按分に対する判断の誤りについて述べる。

 

(2)原審判の前回抗告決定を維持することの判断の誤り

 本件審判においては、前回抗告決定について「3人の子が0歳〜14歳、塾代等月額5万円を特別経費とすること、申立人とAとの間に第1子が出生し、第2子が出生予定であることは考慮しないことを前提としている」とし、また、「婚姻費用分担額の減額ないし増額は、本件決定後の事情の変更により、本件決定額を維持することがおよそ相当ではない場合に限って、許されるもとの解すべきである」とし、本件審判においても前回抗告決定を維持し、婚姻費用分担において、申立人とAとの間の婚外子1子、第2子は考慮しないことを前提としている。

 また、相手方は本件審判の相手方主張書面(2)第1−2−(2)において、「本件において、申立人とAとの間の婚外子の存在については、既に前の審判及び決定時に『考慮され、その前提ないし基準とされた事情』である」(3頁)「従って、申立人の非嫡出子の存在を理由に婚姻費用の減額を認めることは、もとの審判の判断を変更することに他ならず、民法880条上許されない」(4頁)と主張する。

 以上に基づく、原審の判断が誤りであることを以下で述べる。

 

 ①大阪家庭裁判所平成26年7月18日審判(大阪家裁平成26年(家)第1349号)を検討し、上記原審判の判断は誤りである。

 大阪家庭裁判所平成26718日審判(平成26年(家)第1349号)は、以前の審判において婚姻費用算定に考慮されなかった婚外子の存在が、新たに婚姻費用分担を定めるにあたり、当該子の福祉の観点から、考慮された判例である。すなわち、もとの協議・調停・審判の時に「婚外子の存在」は考慮されその前提ないし基準とされた事情であり、その際「婚姻費用の算定において婚外子の存在を考慮しない」という判断がなされていても、後に合理的な根拠があればその判断の変更は許されることを判示している。

 上記審判では「婚外子の出生から6年、申立人による婚外子の認知から1年半、平成21年審判に基づく申立人の相手方に対する婚姻費用の分担義務が定められてから5年がそれぞれ経過している。このような状態で、今後も婚外子の存在を無視したまま婚姻費用分担義務を定めるとすれば、申立人の信義則違反の責任を婚外子のみに負わせる結果ともなりかねず、婚外子の福祉の立場からは相当ではない。特に、申立人の収入が減少している本件においては、婚外子の養育に与える影響は、平成21年審判当時に比しても深刻といわざるを得ない」と判示されており、事情変更としての合理的根拠は、婚外子の出生からの成長、認知時期、婚姻費用分担義務が定められてからの期間、子どもの福祉、収入の増減などであった。

 本件において上記審判を援用すると、別居から6年、非嫡出子第1子が誕生して6年、前回の婚姻費用が定められてから4年、また、前回抗告決定時、胎児であった第2子が誕生してからも既に4年が経過し、更には、平成291月には第3子も誕生しており、今後も婚外子を無視したまま婚姻費用の分担を定めることは、3人の婚外子に、抗告人の信義則違反の責任を負わせ著しい不利益をもたらすにほかならず、子ども達の福祉の立場から相当ではないと言える。また、抗告人の収入が増加しているとはいっても、10%程度の増額にすぎず、前回抗告決定時には1人であった婚外子が既に3人に増加しており、婚外子らの養育に与える影響は、前回抗告決定時と比しても深刻なものと言える。更に、相手方の収入も、前回抗告決定時より数百万円も増加していることによって、上記の事情と合わせ、本来平等であるはずの嫡出子と婚外子との間の福祉にさらに大きな不公平を生じるものであり相当ではないのである。

 よって、本件においても、3人の婚外子の福祉の立場から、婚姻費用の分担において、その子らの生活費を考慮するのが相当である。

 

 ②憲法14条第1項および憲法98条、最高裁判所大法廷判決(最高裁判所大法廷平成19(行ツ)第164号)、および最高裁判所大法廷決定(最高裁判所大法廷平成24年(ク)第984号)を鑑み、上記原審判の判断は誤りである。

 ところで、婚外子の国籍確認請求事件に対する平成2064最高裁判所大法廷判決(平成19(行ツ)第164号)および、民法婚外子相続分差別規定を憲法違反とした平成2594最高裁判所大法廷決定(平成24年(ク)第984号)『非嫡出子の差別的取り扱い』という点で本件と類似しているが、それらでは「憲法141項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである」と判示されている。また、後者最高裁決定では「昭和22民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢および我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でないこの区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる」と、非嫡出子であるということのみをもって、合理的根拠なく差別的取り扱いをするのは、禁止されねばならないと判示されている。さらに、上記で判示されているように、我が国が批准している世界人権宣言第252項、児童の権利宣言第1条、児童の権利に関する条約2条第1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約第24条第2においても、『子どもが出生によっていかなる差別も受けない』とする趣旨の規定が存在しており、憲法98条に基づき、これらの法規は遵守されねばならない。

 一方で、前審判において「相手方は、平成23111日申立人以外の女性との間に子をもうけているが、上記のような経緯や申立人の収入等を考慮すると、この子の生活費を考慮するのは相当ではない」と判示し、非嫡出子の生活費を考慮しない根拠は、申立人の不貞行為、権利者の収入としている。

 しかしながら、『婚姻費用分担の目的』は、信義則違反に対しての法に基づいた損害賠償等の効果や、法制度にない懲罰的制裁的効果を生ずることではないのは当然であり、民法730条、752条、760条、877条に基づき、夫婦間扶養義務あるいは未成熟子扶養義務、すなわち被扶養者に対しての「生活保持義務」を遂行させることなのである。婚姻費用の分担において非嫡出子の生活費を考慮しないことに、万一、懲罰的意味合いがあったとしても、信義則違反に対して、何ら責任のない非嫡出子に結果として著しい不利益をあたえること自体が、合理的とは到底いえない。婚姻費用分担においての未成熟子に対しての費用は、親子関係の効果から生じるものであって、婚姻費用分担を定めるにおいて嫡出子の存在を考慮し嫡出でない子の存在を考慮すべきでないという結論は論理的に当然であるとは説明できるものではないし、非嫡出子が抗告人の不貞行為の結果誕生したという、子にはどうすることもできないことを理由に、婚姻費用分担において非嫡出子の生活費を考慮しないとしている点は、その『婚姻費用分担の目的』との合理性関連性の認められる範囲を著しく逸脱していると言わざるを得ない。

 また、前審判においては「申立人(Y)の収入を考慮して、この子の生活費を考慮しない」とも判示されているが、扶養義務者の収入やその増減によって嫡出子と非嫡出子を差別的に取り扱うことと、未成熟者に対する生活保持義務を遂行させる『婚姻費用分担の目的』との間にも、合理的関連性は何ら見出だせるものではない。なお、子どもの扶養義務者の収入やその増減は、婚姻費用分担において標準的算定方式の中で客観的合理的に考慮されるものであって、そのことによって不公平は生じるべくはないのであって、標準的算定方式適用以前に考慮すべき子どもの数を恣意的に増減させることが、当事者間に直ちに著しい不公平をもたらすのは当然である。

 よって、前審判、前回抗告決定にての、婚姻費用の分担において非嫡出子の生活費を考慮しないという判断は、合理的な理由のない非嫡出子の差別的取扱いであり、上記最高裁判決最高裁判所大法廷平成19(行ツ)第164号)最高裁決定最高裁判所大法廷平成24年(ク)第984号)を鑑みても、更に言うなれば、上記最高裁決定にての婚姻期間中に形成された財産の分与においてよりも、相互扶助義務が形骸化した状況での婚姻費用の分担においては、法律婚を尊重し嫡出子と非嫡出子を差別的に取り扱う合理的な根拠は一層に乏しく、憲法14条第1項に違反していたと言わざるをえない。すなわち、憲法98条に基づき、前審判および前回抗告決定は無効であり、現在において既に維持すべきものではないのは明白である。

 さらに、本件審判においては、前回抗告決定時に将来に予想されている嫡出子の成長による生活費の増加を婚姻費用増額を認める事情とする一方で、予想されていたとはいえ胎児であった非嫡出子の誕生を婚姻費用減額の事情としないばかりか、予測されていなかった非嫡出子の誕生すら婚姻費用分担において考慮しない判断は、不公平極まりなく、上記と同様に婚姻費用分担において合理的な根拠なく婚外子を差別的に取り扱うのを容認することにほかならず、憲法14上第1項に違反しているといわざるを得ない。

 

 ③小括

 以上より、原審の非嫡出子の生活費を婚姻費用の分担において考慮しないという判断は誤りであり、相手方と同居する3人の嫡出子、および抗告人と同居する3人の非嫡出子、抗告人、および相手方の生活費をそれぞれ考慮した上、抗告人抗告理由書(1)の(5)(8頁から10頁)に述べたとおり、名古屋高裁平成28219日決定(平成27年(ラ)第442号)における算定方法を援用し、標準的算定方式を用いて婚姻費用分担額を決定すべきである。

 なお、標準的算定方式においての総収入に対する基礎収入の割合(以下「基礎収入率」という)については、婚姻費用算定表、表1から表19(判例タイムズ No.1111 2003.4.1)を用い、権利者の収入が0の場合においての、養育費・婚姻費用の月額とそれに対するおよその義務者の年収、子どもの人数、当事者の生活費指数を用いて算出し(甲第52号証)、図表化した(甲第51号証)。

 それによると、概ね年収1,734万円に対する基礎収入率は、0.33、年収475万円に対する基礎収入率は0.38、年収650万円に対する基礎収入率は0.37となる。

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(3)超過教育関係費の按分について、原審判断の誤り

 ①大阪高裁平成26826日決定(大阪高裁(ラ)第595号)に矛盾した誤り。

 特別経費としての超過教育関係費について、阪高裁平成26826日決定(大阪高裁(ラ)第595号)では、「この超過額は、抗告人及び相手方がその生活費の中から捻出すべきものである。そして、標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資となし得る金額が同額になることに照らして、上記超過額を抗告人と相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である」と判示されている。しかしながら、原審判においては、「本件決定において考慮された特別経費月額5万円を減額すべき事情もない」とした上で、抗告人一方のみに特別経費を負担させることが判示されているが、その判断は、上記大阪高裁決定に矛盾し誤りである。

 上記大阪高判例においては、義務者、権利者の収入を合算すると高額になり、当事者の生活費が潤沢であることから、超過教育費を生活費から捻出すべきであると判示されていると考えられるが、本件においても、婚外子の生活費を考慮したとしても、相手方世帯に按分される基礎収入、生活費は高額であり、十分に超過教育費を捻出できるのであるから、同様に等分処理されるのが相当である。また、上記判例と類似し、相手方は実家にて生活しており、家賃などの居住費の負担がないこと、同居している実母は相手方の勤務する社会福祉法人の理事長であり、且つ同法人○○○保育園の施設長であり(相手方も同法人○○保育園の施設長であり、同居の実姉も同法人保育園の保育士である)、高額の収入があり実家から援助を十分に受けられること、別居後、相手方の子ども達の進路、進学についての判断の過程は、すべて抗告人の全く関係しない相手方の実家を中心とした社会生活、日常生活の中でなされていること、このような実態より相手方世帯の超過教育費は相手方が負担するのが相当である。

 

 ②是認されている標準的算定方式の合理性(最高裁判所平成18426日決定)を逸脱した誤り。

 また、原審判抗告人主張書面(4)(7頁)(甲第43号証)でも述べたが、標準的算定方式は、最高裁判所平成18年4月26日決定「婚姻費用分担額を算定した原審の判断は、合理的なものであって、是認することができる」と判示されている。ところが、超過教育関係費を抗告人のみが負担する原審による算定結果は、甲第46号証で示したように、仮に抗告人1人世帯であったとしても、抗告人に按分される生活費は年額およそ113万円であるに対して、相手方、および第1子、第2子、第3子に按分される生活費は、それぞれ173万円、176万円、176万円、115万円で、極めて不均衡、不公平であり、婚姻費用分担の目的、標準的算定方式の基本をなす「生活保持義務」の趣旨に反しており、不当である。

 さらに、この算定結果によって抗告人に按分される年額113万円に過ぎない基礎収入が、実際には抗告人と非嫡出子3人の世帯に按分されるのであり、抗告人と同居する3人の非嫡出子に著しい不公平と不利益をもたらす『婚外子の差別的な取り扱い』にほかならず、本件の決定額をそのまま維持することが「一方の当事者に著しく酷であって、客観的に当事者間の衡平を害する結果になる」ことも明白である。

 

 ③憲法14条第1項に基づいた非嫡出子の嫡出子と同等の教育を受ける権利、生活を送る権利を考慮しない誤り。

 さらに、憲法14条第1項に基づき非嫡出子は嫡出子と同程度の教育を受ける権利を有している。そこで、嫡出子3人に月額5万円の超過教育費が按分されるのであれば、同様に、非嫡出子3人にも月額5万円の超過教育費が按分されるべきである。よって、超過教育関係費は合わせて10万円になり、抗告人、相手方で等しく按分し特別経費は5万円ずつの負担になるが、それはすなわち、抗告人、相手方が同じ世帯の嫡出子、非嫡出子の超過教育費をそれぞれ負担することを意味しており、抗告人が相手方世帯の超過教育費の負担は生じないことになる。なお、申立人と同居の非嫡出子は幼児であるが、2人は嫡出子と同様に私立の幼稚園に通園しており、その教育費は標準的算定方式における子どもの学習費調査統計表(判例タイムズNo.1111 2003.4.1 295頁 資料4)(甲第37号証)を参照しても、公立小学校、公立中学校の教育費を大きくうわまっており、年少であるがゆえに生活費、教育関係費を多く要しないという主張には根拠がない。

 言い換えると、相手方世帯の超過教育費を抗告人に負担させることは、抗告人世帯の非嫡出子の生活費、教育費の減額につながり、非嫡出子に不利益をあたえ、福祉を害する結果になるのである。そして、嫡出子と非嫡出子は同等の生活を送り、教育を受ける権利があること、現状の相手方世帯の実態、別居後の嫡出子の進路についての判断、決定の過程を鑑みても、抗告人が相手方世帯の嫡出子の超過教育費を負担することによって非嫡出子に不利益を与えるという差別的な扱いに対する合理的な根拠は既に見いだせないというべきであり、抗告人が特別経費として相手方世帯の超過教育費を負担するのは相当ではない。

 

 ④小括

 以上より、原審においての特別経費としての教育関係費を抗告人一方が負担するという判断は誤りであり、抗告人、相手方各々の世帯での超過教育関係費は各々が世帯の生活費から捻出すべきであり、抗告人が相手方世帯の超過教育費を負担するのは相当ではない。

 

(4)結語

 本件においては、婚姻費用分担にあたり、抗告人と同居する3人の婚外子の存在を考慮し、また、特別経費として超過教育関係費の上乗せはせず、標準的算定方式によリ婚姻費用分担額を定めるのが相当である。

 よって、抗告の趣旨の通り、裁判を求める。

 

附属書類

抗告理由書(2) 副本 1

甲第51号証〜甲第52号証 各正本1部、副本1

以上

婚姻費用算定において婚外子の養育費を考慮しなくとも憲法14条1項違反ではない

 

 

大阪高等裁判所平成29年12月8日決定

 (大阪高裁平成29年(ラ)第1204号)

(裁判長裁判官 河合裕行 

  裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)

(原審・京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号,第1238号 裁判官 松井千鶴子)

 

 

大阪高等裁判所

平成29年(ラ)第1204号婚姻費用分担(減額,増額)審判に対する抗告事件(原審・京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号(甲事件),第1238号(乙事件))

 

決定


甲事件申立人・乙事件相手方 X
甲事件相手方・乙事件申立人 Y

同手続代理人弁護士 Z

 

主文

1 本件抗告をいずれも棄却する。

2 抗告費用は各自の負担とする。

 

理由

 

第1 抗告の趣旨

1 原審申立人

(1) 原審判を取り消す。

(2) 原審申立人は,原審相手方に対し,平成29年2月から同年8月まで毎月末日限り16万円,同年9月から毎月末日限り18万円を支払え。

2 原審相手方

(1) 原審判主文第1項を次の通り変更する。

(2) 大阪高等裁判所が同裁判所平成25年(ラ)第676号婚姻費用分担審判に対する抗告事件について平成25年8月30日にした決定の主文第3項を次の通り変更する。

 原審申立人は,原審相手方に対し,平成29年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで,毎月末日限り52万円を支払え。

 

第2 事案の概要(以下,概略は,原審判の表記に従う。)

1 事案の要旨

 原審申立人と原審相手方は,平成10年○月○日に婚姻し、長男(平成11年○月○日生),二男(平成14年○月○日生)及び三男(平成17年○月○日生)をもうけたが,原審申立人が,平成23年○月に家を出て,以後別居している。

 原審申立人の婚姻費用分担について,大阪高等裁判所は,平成25年8月30日,①平成25年7月までの未払婚姻費用347万6838円の即時支払(本件決定主文第2項)と②同年8月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで毎月末日限り36万円の支払(本件主文第3項)を命じ(同裁判所平成25年(ラ)第676号),同決定が確定したが,原審申立人が,平成29年2月8日,婚姻費用分担減額調停事件を申し立て,原審相手方が,同月28日,婚姻費用分担増額調停事件を申し立て,同年7月10日,同調停は不成立となり,原審判手続に移行した。

 原審は,平成29年9月14日,本件決定主文第3項を,原審申立人に対し,平成29年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで毎月末日限り38万5000円の支払を命じる変更審判をしたところ,これを不服として,原審申立人及び原審相手方がそれぞれ抗告した。

 

2 抗告理由の要旨

(1) 原審申立人

 別紙「抗告理由書(1)」及び「抗告理由書(2)」(各写し)記載のとおり

(2) 原審相手方

 別紙「抗告理由書」(写し)記載のとおり

 

第3 当裁判所の判断

 1 当裁判所も,原審と同様,本件決定主文第3項の婚姻費用分担額を,平成29年2月以降,月額38万5000円に変更するのが相当であると判断する。

 その理由は,次のとおり補正し,後記2で抗告理由について必要な判断を付加するほかは,原審判「理由」の中の「第2 当裁判所の判断」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。

 (1) 原審判2頁5・6行目の「長男A1」の次に「(以下「長男」という。)」を,同頁6行目の「二男A2」の次に「(以下「二男」という。)」を,同頁6・7行目の「三男A3」の次に「(以下「三男」という。)」を各加え、同頁10行目の「看護師の資格を有するが,」を「医療機関に勤務していたが,」と改める。

 (2) 原審判3頁2・3行目の「第3子が出生したことを理由として,」を「Bとの間に第3子が出生したことやBとの間の子らの成長,原審相手方の収入の増加を理由として,」と改める。

 (3) 原審判3頁10行目冒頭から同頁14行目末尾までを次のとおり改める。

 「(8) 原審申立人は、C病院の内科医師として勤務しており,平成28年の給与収入は1734万1561円であった。一方,原審相手方は,D保育園園長として勤務しており,平成28年の給与収入は475万0269円である。

 (9) 長男は,E県の全寮制の私立高校3年生である。二男は,中高一貫校の公立中学3年生であり、通信教育と塾の講習(年3回)を受けている。三男は,公立小学校6年生であり,二男と同じ中学校に入学するために,進学塾に通いながら,通信教育を受けている。」

 

 2 抗告の理由に対する判断

(1) 原審申立人の主張について

 ア 原審申立人は,抗告理由(第2の2(1))の中で,Bとの間に認知している3人の子に対して扶養義務を有しているところ,婚姻費用の算定において同人らの生活費を一切考慮しないことは,上記3名の嫡出子との同等の養育を受ける権利を侵害するものであり,憲法第14条1項に違反する旨主張する。

 なるほど、原審申立人は,未成年者らのほか,上記3名の子に対しても扶養義務を有しているが,婚姻費用の分担金は,公平の観点から一切の事情を考慮して定められるものであって,前記第3の1において原審判を補正引用して説示したとおり,原審申立人が不貞行為に及んだ結果,上記3名の子が出生したことを含む原審申立人と原審相手方が別居に至った経緯や原審申立人の収入,さらにBの稼働能力等,本件における一切の事情を考慮して算定したものであるから,その判断に当たって上記3名の子の生活費を具体的に考慮しなかったからといって,ただちに上記3名の子らの養育を受ける権利を侵害し,憲法第14条第1項に違反するとはいえず,また,原審申立人の婚姻費用分担額を変更すべき程度の事情の変更があったと認められないとした原審の判断に違法,不当な点はない。原審申立人は,本件決定時にはBとの間の第三子の出生を予測し得なかった事情であるとも主張するが,そうであったとしても,そのことをもって上記認定を左右するものではない(ちなみに,原審申立人は,毎月手取りで約85万円の給与・賞与を得ており,その収入額に照らせば,原審相手方に対し,婚姻費用分担金として毎月38万5000円を支払うとしても,原審申立人とBとの間の上記3名の子の生活水準が未成年者らの生活水準に比して著しく低下するとは考えられない。)。原審申立人の上記主張は採用できない。

 

 イ また,原審申立人は,同じく抗告理由(第2の2(1))において,①原審相手方の収入が増加した旨,②原審相手方の収入を650万円と認定すべきである旨,③原審相手方の実母が高収入を得ており,実家から援助をうけられる旨主張する。

 しかしながら,上記①については,前記第3の1において原審判を補正引用して説示したとおり,婚姻費用算定に当たり既に考慮しているものであるし,上記②については,これを裏付ける的確な資料がない。また、上記③については,原審申立人の原審相手方及び未成年者らに対する生活保持義務は,そもそも原審相手方の母が負うべき生活扶助義務に優先するものであるから,婚姻費用分担額の算定に当たり考慮することは,もとより相当ではない。したがって,原審申立人の上記各主張は失当であり,いずれも採用できない。

(2) 原審相手方は,抗告理由(第2の2(2))の中で,未成年者らの私立高等学校の費用や塾等の教育費用に月額29万4000円を要しており,原審申立人は,原審判の認定した婚姻費用分担額に少なくとも20万4000円を増額して負担すべきである旨主張する。

 しかしながら,標準算定方式においては,公立中学校・公立高等学校の子がいる世帯の平均収入に対する公立中学校・公立高等学校の学校教育費相当額を考慮することにより、子に充てられるべき生活費の割合が求められているところ,公立中学校の子のいる世帯の平均収入が828万4332円であり,公立高等学校の子のいる世帯の平均収入が857万2834円であるのに対し,原審申立人及び原審相手方の世帯収入は2209万円以上であって,公立高等学校の子のいる世帯の平均収入を1350万円以上も上回っているため,未成年者らに充てられる生活費の額も,公立中学・高等学校の教育費を大幅に上回る金額が考慮されていることに加え,本件に現れた一切の事情を併せ考慮すれば,現時点において,本件決定において考慮された特別経費5万円を増額すべき事情があるということはできない。原審相手方の主張は理由がなく,採用できない。

 

3 結論

 以上によれば,原審判は相当であり,本件抗告はいずれも理由がないから,本件抗告をいずれも棄却することとして,主文のとおり決定する。

 平成29年12月8日

   大阪高等裁判所第10民事部

 

         裁判長裁判官 河合 裕行 

             裁判官 濱谷 由紀

             裁判官 丸山 徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

 

 

婚外子の誕生は婚姻費用を減額すべき事情変更と言えない

 

 

京都家庭裁判所平成29年9月14日審判

 (平成29年(家)第1237号、第1238号 裁判官 松井千鶴子)

                  

婚外子の誕生を理由として、

婚姻費用の減額を申し立てたところ、

新たな婚外子の誕生も、

婚外子の3人の生活費も一切考慮しない、

一方で嫡出子の成長を考慮し、

婚姻費用の増額を命じた審判 

 

上記審判に対しては即時抗告がされているが、抗告審(大阪高裁平成29年(ラ)第1204号)にても婚外子の養育費は考慮されていない。 

 

 

 

京都家庭裁判所

平成29年(家)第1237号 婚姻費用分担(減額)申立事件(甲事件)

同1238号 婚姻費用分担(増額)申立事件(乙事件)


審判


甲事件申立人・乙事件相手方 X


甲事件相手方・乙事件申立人 Y

同手続代理人弁護士 Z

 

主文

1 大阪高等裁判所が同裁判所平成25年(ラ)第676号婚姻費用分担審判に対する抗告事件について平成25年8月30日付けでした決定の主文第3項を次の通り変更する。

 申立人は,相手方に対し,平成29年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで,毎月末日限り38万5000円を支払え。

2 申立人の甲事件申立てを却下する。

3 手続き費用は各自の負担とする。

 

理由

第1 事案の概要

 本件は,平成23年○月以降別居中の夫婦である当事者が,平成25年8月30日大阪高等裁判所で決定された婚姻費用分担額について,申立人は36万円から22万円への減額を,相手方は36万円から41万5000円への増額を,それぞれ求める事案である。

 

第2 当裁判所の判断

1 認定事実

 本件記録(前提となる当庁平成29年(家イ)第411号及び同第412号事件記録を含む。)及び当庁平成29年(家イ)第410号事件記録によれば、次の事実が認められる。

(1) 申立人(昭和48年○月○日生)と相手方(昭和47年○月○日生)は、平成10年○月○日婚姻の届出をし,平成11年○月○日長男A1,平成14年○月○日二男A2,平成17年○月○日三男A3がそれぞれ出生した。

(2) しかし,申立人は,B(以下「B」という。)と不貞行為に及び,平成23年○月,一人で自宅を出て,相手方と別居するに至り,その後Bと同居して生活している。Bは,看護師の資格を有するが,現在は無職である。

(3) 申立人とBとの間には,平成23年○月○日B1(平成23年○月○日胎児認知),平成25年○月○日B2(平成25年○月○日胎児認知)及び平成29年○月○日B3(平成28年○月○日胎児認知)がそれぞれ出生している。

(4) 相手方は,申立人との別居後である平成23年○月○日、京都家庭裁判所において,申立人に対して婚姻費用分担の調停を申し立てたが,同調停は不成立となって審判手続きに移行し,平成25年5月15日同裁判所は,婚姻費用分担金を月額32万円と定める審判をしたが,相手方及び申立人双方が,これを不服として抗告した。

(5) 抗告審である大阪高等裁判所は,平成25年8月30日,婚姻費用分担金を月額36万円と定める決定をした(以下「本件決定」という。)。なお,本件決定においては,収入について,申立人が平成24年以降1578万円であり,相手方が85万円程度であること,3人の子が0歳〜14歳,塾代等月額5万円を特別経費とすること,申立人とBとの間に第1子が出生し,第2子が出生予定であることは考慮しないことを前提としている。

(6) 申立人は,本件決定後である平成29年2月8日,第3子が出生したことを理由として,甲事件申立てに及んだ(京都家庭裁判所福知山支部平成29年(家イ)第502号として申し立てられ,その後京都家庭裁判所に回付された。当庁平成29年(家イ)第411号)。

(7) 相手方は,平成29年2月28日,子らの成長に伴う学費の増加を理由として,乙事件申立てに及んだ(京都家庭裁判所福知山支部平成29年(家イ)第503号として申し立てられ,その後京都家庭裁判所に回付された。当庁平成29年(家イ)第412号)。

(8) 平成28年の収入は,申立人が1734万1561円,相手方が475万0269円である。申して人と相手方との長男は全寮制の私立高校に進学し,二男は中高一貫教育の公立中学に入学したが,大学進学のため塾に通う予定であり,三男は小学生であるが,二男と同じ中学を受験するため塾に通う予定である。


2 判断

(1) 本件では,婚姻費用分担金について,申立人が本件決定額の減額を,相手方が増額をそれぞれ求めるところ,婚姻費用分担額の減額ないし増額は,本件決定後の事情の変更により,本件決定額を維持することがおよそ相当でない場合に限って,許されるものと解すべきである。

(2) まず,双方の収入に変更が生じていることから,収入を申立人1734万1561円,相手方475万0269円,15歳〜19歳の子2人(なお,二男は,本審判時は14歳であるが,その翌日には15歳になることから15歳とみなして算定することとする。),0歳〜14歳の子1人を前提として,標準的算定方式(家庭裁判所月報55巻7号155頁以下,判例タイムズ1111号285号以下)により婚姻費用分担金の額を算定すると,その額は32万円〜34万円の上方域となるところ,諸般の事情を併せ考慮すれば,現時点では月額33万5000円が相当であり,本件決定時に平成24年以降の相当額とされた31万円を上回ることとなる。

(3) ところで,申立人は,本件決定後,Bとの間に第3子が出生したことを理由に婚姻費用分担額の減額を主張する。

 この点,申立人は,Bとの間に3人の子があり,いずれも認知していることから,3人の子に対する扶養義務があることは否定できない。しかし,申立人が不貞行為に及びその結果子が出生し,別居に至った経緯や申立人の収入,さらにBの稼働能力を考慮すれば,Bとの間に第3子が出生したのは本件決定後の事情であったとしても,婚姻費用分担額を減額すべき程度の事情であるということはできない。

(4) 一方,相手方は,本件決定後,長男,二男及び三男の成長に伴って学費等が増加したことを理由に婚姻費用分担額の増額を主張する。

 この点,の年齢に応じて子に係る費用が増加することについては,前記(2)における額で既に考慮されており,直ちに,これを超えて増額を認めることが相当な事情ということはできない。もっとも、長男が私立高校に進学していることや二男及び三男が塾に通うことを予定していることからすれば,本件決定において考慮された特別費用月額5万円を減額すべき事情もないというべきである。

 また,相手方は,標準的算定表による算定が不相当である旨の主張もするが,本件決定後,標準的算定方式による算定によることが相当でない事情が生じたと認めることはできない。

(5) したがって,本件決定については,婚姻費用分担金を平成29年2月以降当事者の離婚または別居状態の解消まで月額38万5000円(33万円+5万円)と定めるのが相当であり,婚姻費用分担金の減額を求める申立人の甲事件申立ては理由がない。


3 よって,主文のとおり審判する。


 平成29年9月14日

   京都家庭裁判所

       裁判官 松井 千鶴子

 

裁判官松井千鶴子

裁判官松井千鶴子

裁判官松井千鶴子f:id:cekece:20180420122328j:plain

裁判官松井千鶴子


裁判官松井千鶴子

 


 

許可抗告の現実

大阪高裁平成29年12月8日決定(平成29年(ラ)第1204号)(裁判長裁判官 河合裕行 裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)では、

 

名古屋高裁平成28年(ラ)第442号による

『重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは信義則に反すると主張するが、婚外子は嫡出子と同様、抗告人から等しく扶養を受ける権利を有する』

とした判断と相反し、

 

『不貞関係から出生したことを含む一切の事情を考慮して、婚姻費用算定に婚外子の生活費を考慮しない』

とする判断をしている。

 

その判断は、上記の名古屋高裁によって取り消された

岐阜家裁中津川出張所平成28年(家)第76号

非嫡出子に対する扶養義務を果たすために相手方に対する婚姻費用の減額を認めることは、申立人の不貞行為を助長ないし追認するも同然であり、信義誠実の原則に照らし、認められない』

と実質的に同等の判断である。

 

上記大阪高裁決定について、特別抗告(最高裁判所第一小法廷平成30年(ラ)第242号)と同時に、以下のように、許可抗告が提起されているが、

 

阪高裁は、

高等裁判所の決定に対する抗告の許可は,家事手続法第97条2項により,その決定について,最高裁判所判例(これがない場合にあっては,大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所判例)と相反する判断がある場合に限られるところ,本件は,同項所定の場合に該当しないというべきである』

として、抗告を許可しなかった。

 

 

平成29年(ラ許)第405

(原審・大阪高等裁判所平成29年(ラ)第1204

原原審・京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号、同第1238号)

申立人 X

相手方 Y

抗告許可申立て理由書

(1)緒語

 原審は、京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号婚姻費用分担(減額)申立事件、平成29年(家)第1238号婚姻費用分担(増額)申立事件に対して、京都家庭裁判所のなした平成29914日審判を是認し、抗告人の抗告を棄却した。

 しかし、婚姻費用分担において婚外子を考慮しない原審の判断は、民法877条第1項の違反、および家事事件手続法第39条の解釈の誤りによるものである。また、婚外子の誕生を「事情の変更」としない原審の判断は、名古屋高裁平成28年2月19日決定(平成27年(ラ)第442号)に相反するが、民法877条第1項の違反、民法880条の解釈の誤りによるものである。そして、前件審判の判断を維持存続させ、終局的に確定させるに等しい原審の判断は、民法877条第1項の違反、家事事件手続法第39条、および民法880条の解釈の誤りによるものである。さらに、原審による婚姻費用分担の形成決定は、最高裁平成18年4月26日決定(平成18年(許)第5号)にて合理性が是認されたいわゆる標準的算定方式による結果から逸脱し、合理的根拠、および民法第760条、民法第877条第1項に基づく法的根拠を有しないものであり、不当である。

 よって、最高裁判所に対して、原審を破棄し、更なる相当の裁判を求めるため、抗告を許可することを求める。

 以下に、理由を述べる。

 

2)婚姻費用分担において婚外子を考慮しない原審の判断は、民法877条第1項の違反、および家事事件手続法第39条の解釈の誤りによるものである。

 家事事件手続法第39条別表第22号に定められる婚姻費用分担事件は、非訟事件手続きたる家事審判事件であるが、最高裁判所昭和40630日決定(昭和37年(ク)第243号)によると、婚姻費用分担に関する争いにつき、分担請求権自体の存否については純然たる訴訟事項であり、その分担額を具体的に形成決定するのが家事審判事項であると説示している。すなわち、婚姻費用分担の審判において、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」との民法760条に明記される夫婦間の扶養の実体的権利義務の存在は、自明であり前提とされるのと同様に、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」との民法877条第1項に明記された、子どもの扶養を受ける実体的権利の存在も前提とされるものである。また、婚姻費用分担の根拠たる婚姻関係が存続する以上、民法752条に明記される相互扶助義務も前提であり、本件においては、申立人の婚外子と嫡出子への等しい扶養義務に対する、相手方の扶助義務が前提とされねばならない。よって、婚姻費用分担の審判においては、婚外子の扶養を受ける権利を一定に考慮せねばならないことは当然であるばかりか、その権利を嫡出子のものと同等に考慮することが前提とされるべきである。

 そして、原審は、婚姻費用分担の具体的形成の根拠として、後述のいわゆる標準的算定方式を採用しているのであるから、標準的算定方式においても、婚外子は一定に考慮されねばならないのみならず、嫡出子と等しく取り扱われるべきである。言い換えると、標準的算定方式によって婚外子を嫡出子と公平に取り扱わないにも関わらず、婚姻費用分担の形成決定が結果的に婚外子にとって公平なものであるとの論理は成り立ちえないのである。

 ところが、原審では、標準的算定方式において、すなわち婚姻費用分担の形成処分において、婚外子を嫡出子と同等に考慮しないどころか、一切考慮していない。しかも、原審の説示する「一切の事情」に、具体的形成的に婚外子の扶養を受ける権利を減ずる程度の、少なくともその権利をないものとする程度の合理的な根拠は、何ら存在しない。すなわち、原審は、家事審判における具体的形成処分を逸脱し、婚外子の実体的権利を否定するものにほかならない。よって、その原審の判断は、民法877条第1項の違反、および家事事件手続法第39条の解釈の誤りによるものである。

 

3)前件審判にて予測し得なかった婚外子の誕生を「事情の変更」としない原審の判断は、名古屋高裁平成28年2月19日決定(平成27年(ラ)第442号)に相反し、民法877条第1項の違反、および民法880条の解釈の誤りによるものである。

 名古屋高裁平成28219日決定(平成27年(ラ)第442号)は、婚姻費用分担調停後に婚外子が誕生したことを事由として婚姻費用分担の減額申立をした裁判例であり、重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは信義則に反するとの主張は採用できない旨、婚外子は嫡出子と等しく扶養を受ける権利がある旨、予測し得なかった婚外子の誕生は、婚姻費用分担額を変更すべき「事情の変更」に該当する旨が説示され、標準的算定方式によって、婚外子と嫡出子が等しく取り扱われ、婚姻費用分担金が決定された。

 一方、原審は前件審判後の予測し得なかった婚外子3子の出生を、民法880「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更が生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消をすることができる」との類推による、婚姻費用分担額を変更すべき程度の「事情の変更」とは認めなかった。

 しかし、民法880条は実体的権利関係の変動等により、家事審判による形成決定の変更を可能にすることが立法趣旨であり、婚外子の誕生は、民法877条第1項に明記される扶養を受ける実体的権利が自明の未成熟者の数に変更が生じたことにほかならず、民法880条に規定される「事情の変更」であることは自明である。そして、扶養を受けるべき未成熟子の数の変更が、前件審判の内容をそのまま維持させることが当事者間の衡平を害するおよそ相当でない「事情の変更」であることもまた自明である。

 さらに、前件審判時に扶養を受ける具体的形成的権利が認められなかった、1歳の婚外子と胎児が、現在6歳、4歳に成熟している事情を加えると、「事情の変更」とされるべきなのは、なおさら明らかである。もっとも、原審は、嫡出子については、その成長を婚姻費用を変更すべき「事情の変更」とする一方で、婚外子の成長、婚外子胎児の誕生、予測されない婚外子の出生までをも「事情の変更」と認めておらず、その判断は、合理的であるとも、婚外子にとって中立公正であるとも、到底言えないものである。

 すなわち、予測し得なかった第3子の婚外子の誕生を、婚姻費用分担額を変更すべき程度の事情の変更としない原審の判断は、民法877条第1項の違反、および民法880条の解釈の誤りによるものである。 

 

(4)前件審判による形成決定を維持する原審の判断は、婚外子の扶養を受ける実体的権利をないものと終局的に確定するに等しく、民法877条第1項の違反、家事手続法第39条および民法880条の解釈の誤りによるものである。

 ところで、原審は、民法880条の類推による婚姻費用分担の形成処分の変更について、「婚姻費用の分担額の増額減額は、本件決定後の事情の変更により、本件決定額を維持することがおよそ相当でない場合に限って、許されるものと解すべきである」と説示し、前件審判の判断を維持、存続させているものの、上述したように「事情の変更」の存在は明白であって、それを維持する判断は、原審が説示する「事情の変更」を根拠としたものではない。それは、前件審判に訴訟事件手続きにおける既判力があるかのごとく、拘束されねばならないとの誤った解釈によるものである。

 家事事件手続法第39条に規定される婚姻費用分担の審判は、非訟事件手続であるところ、弁論主義、処分権主義に基づく訴訟事件手続における既判力はなく、その形成決定は民法880条等の規定の有無にかかわらず取り消し、変更が可能とされる。さらに、非訟手続において即時抗告をすることができる終局決定は、非訟手続法第59条による取り消し変更ができないが、最高裁平成161216日決定(平成16年(許)第20号)によると、非訟手続は裁判所が後見的立場から裁量により私的な権利関係を形成する性質を有しており、裁判が不当な場合には、職権でこれを取り消し、又は変更することができるとされている。すなわち、前件審判における婚姻費用分担の形成決定は、終局的に確定されたものでなく、取り消し変更は当然に可能なものである。

 そして、既に6年以上にわたり、存在が自明の婚外子の扶養を受ける実体的権利は、前件審判によって具体的形成的にないものとされており、その上さらに、原審が前件審判の判断を維持することは、婚外子と申立人の親子関係の存在を前提にしつつ、婚外子が申立人から扶養を受ける権利がないことを、審判によって終局的に確定させるに等しいものである。しかしながら、その様態は民法877条第1項に衝突し、法的根拠はないのであり、訴訟手続によって終結的に確定させうるものではない。すなわち、前件審判を維持する法的根拠は一切存在せず、それを維持することは相当ではない。

 そもそも、婚姻費用分担審判においては、親子関係の存在を前提とする以上、婚外子を考慮するのが、法に矛盾せず合理的な通常の判断であり、一時的であっても、それに相反する前件審判における判断に、合理的根拠はなく、上述したように、民法877条第1項に違反し、家事事件手続法第39条の解釈の誤りによる不当なものである。さらに、その判断を維持、存続させ、終局的に確定させるのは、法的根拠なく、法に違反し、婚外子の権利を著しく侵害するものであって、法による正義に明らかに反するものである。よって、婚外子に関する前件審判の判断は、「事情の変更」の有無にかかわらず、直ちに取り消し、変更がなされねばならないものである。

 

5)原審の婚姻費用分担金は、最高裁平成18426日決定(平成18年(許)第5号)にて合理性が是認された標準的算定方式による形成処分を逸脱し、その合理的根拠、法的根拠が一切ない。

 平成18426最高裁決定(平成18年(許)第5号)は、民法760条を法的根拠とする婚姻費用の分担に、当事者と扶養を受けるべき子が同居していると仮定し、各々の生活費指数を考慮し、婚姻費用を按分する、いわゆる標準的算定方式を用いた広島家裁平成17819日審判(平成17年(家)第534号)の判断を、「合理的なものであって、是認することができる」と判示した。

 原審は、婚姻費用分担の形成処分に、合理性および法的根拠として、上記の標準的算定方式を採用するものである。しかし、標準的算定方式にて考慮されるべき婚外子、すなわち扶養をうける実体的権利が自明の子どもの生活費指数を、合理的理由なく、一切に考慮していない。よって、原審による婚姻費用分担金は、外観上標準的算定方式を用いたものであっても、その手続に瑕疵がある故、もはや標準的算定方式によるものと言えない。すなわち、原審による婚姻費用の具体的形成決定は、合理性、および民法第877条第1項、民法760条に基づく法的根拠を一切に失ったものである。

 また、原審は、教育費としての特別経費に関して、申立人と相手方の収入の合計が、標準的算定方式における平均収入を大きく上回るため、嫡出子の生活費、教育費が平均を大きくうわまわる旨説示しており、超過教育費を考慮する合理的根拠がないとするものである。しかし、そもそも婚姻費用分担金に慰謝料的、懲罰的趣旨を含む法的根拠はないにもかかわず、「一切の事情を考慮して」との説示により、相手方の稼働能力の大幅な変更などの事情の変更すら考慮せず、前件審判における特別経費を上乗せする判断を理由なく維持している。さらに、その判断による実際の婚姻費用分担額は、生活保持義務を基礎とする標準的算定方式の理論的構造を明らかに逸脱したものである。すなわち、婚姻費用の形成処分において、「一切の事情を考慮」し、特別経費を課する原審の裁量には、合理性、法的根拠は何ら存在しておらず、特別経費に関する原審の判断も、合目的的で、法に基づく裁量によるものとは到底言えず、不当なものである。

 以下に、原審が前提とする、婚外子の生活費を考慮しないこと、申立人に特別経費月5万円を負担させることによる、婚姻費用分担金の当事者に対する具体的な按分概算額を示す。なお、特別経費は3人の嫡出子に等しく按分したとする。この実際の算定結果は、適正な手続による標準的算定による結果から大きく逸脱し、その理論的基礎たる生活保持義務を満たしているとさえ、到底言えないものである。

 

相手方

嫡出子第1

嫡出子第2

嫡出子第3

申立人

婚外子1

婚外子2

婚外子3

生活費指数

100

90

90

55

100

55

55

55

特別経費(万円)

 

20

20

20

-60

 

 

 

年按分額(万円)

173.8

176.5

176.5

115.6

113.8

0

0

0

実質生活費指数

100

102

102

67

65

0

0

0

世帯按分額(万円)

642.4

113.8

 

 さらに、原審は、申立人の手取り給与から原審による婚姻費用分担金を減じた結果を想定し、婚外子の扶養を受ける権利を侵害するものではないと説示するが、その説示は、客観的根拠を欠いており、形成処分の根拠に標準的算定方式を採用する一方、職業費、経費等を控除した基礎収入の按分という理論的構造を否定するに同然の矛盾したものであって、相当ではない。

 以上より、原審による婚姻費用分担金は、民法877条第1項、民法760条に明記された実体的権利を反映させたものでも、合理性を是認された標準的算定方式の理論に合致するものでもなく、婚姻費用の形成処分に対する根拠を一切失った不当なものである。

 

6)結語

 よって、最高裁判所に対して、本件決定を破棄した上、更に相当の裁判を求めるため、本件抗告を許可することを求める。

 

附属書類

1 抗告許可申立て理由書副本  7通

以上

 

 抗告許可申立て理由書に、以下の理由を加える。

(1)標準的算定方式において、婚外子を考慮しない原審の判断は、名古屋高裁平成28年2月19日決定(平成27年(ラ)第442号)に相反し、民法877条第1項に違反する。

 上記、名古屋高裁判例では、重婚的内縁関係から派生した婚外子について、嫡出子と等しく扶養を受ける権利があると説示され、標準的算定方式において、婚外子と嫡出子は等しく扱われ、婚姻費用の分担額が定められた。一方原審は、この判断に相反し、「原審申立人が不貞行為に及んだ結果、上記3人の子が生まれたことを含む」「一切の事情を考慮」して、標準的算定方式において、婚外子を一切考慮しないと判示している。

 しかし、原審の説示する「一切の事情」と、何ら非のない婚外子を考慮しないこととの間に、合理性関連性はない。よって、婚姻費用分担の形成処分、すなわち原審がその形成処分の合理性の根拠および基礎とする標準的算定方式において、扶養を受ける実体的権利が自明の婚外子を考慮しないのは、民法877条第1項に違反し、不当である。

附属書類

1 抗告許可申立て理由書(2)副本  7通

以上

 

裁判官 河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官 河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

 

 

最高裁決定 本件抗告を棄却する

 『婚姻費用の算定において婚外子の養育費は考慮しない』

 大阪高裁平成29年(ラ)第1204号

(原審 京都家裁平成29年(家)第1237号、第1238号

『婚姻費用の分担金は,公平の観点から一切の事情を考慮して定められるものであって,

原審申立人が不貞行為に及んだ結果,上記3名の子が出生したこと

を含む原審申立人と原審相手方が別居に至った経緯や原審申立人の収入,さらにBの稼働能力等,

本件における一切の事情を考慮して算定したものであるから,その判断に当たって

上記3名の子の生活費を具体的に考慮しなかったからといって,

ただちに上記3名の子らの養育を受ける権利を侵害し,

憲法第14条第1項に違反するとはいえず

また,原審申立人の婚姻費用分担額を変更すべき程度の事情の変更があったと認められない』

 

として、婚姻費用算定において婚外子の養育費を考慮しないこととした。 

上記決定に対して、憲法第14条第1項違反等を理由としての最高裁への特別抗告理由は以下である。

 

この特別抗告に対して、最高裁は平成30年4月9日(平成30年(ク)第242号、第243号)において、

『本件各抗告の理由は,違憲をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,特別抗告の事由に該当しない。』

 

として、棄却している。

(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口厚

 

 

特別抗告人 X

相手方 Y

特別抗告理由書

最高裁判所 御中                        

 

(1)緒語

 原審は、京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号婚姻費用分担(減額)申立事件、平成29年(家)第1238号婚姻費用分担(増額)申立事件に対して、京都家庭裁判所のなした平成29914日審判を是認し、特別抗告人(以下、「抗告人」という)の抗告を棄却した。

 しかし、婚姻費用分担における未成熟婚外子の取扱いに関する原審の判断には、憲法14条第1項、憲法13条、憲法24条の違反、および憲法解釈の誤りがある。また、原審は、前件審判に拘束され、その判断を維持存続し、終局的に確定させるに等しいが、その法的根拠は一切なく、憲法98条第1項にも違反するものである。

 以下に、理由を述べる。

 

(2)婚姻費用分担において、婚外子の生活費を具体的に考慮しない原審の判断は、憲法14条第1項、憲法13条、憲法24条に違反する。

 本件において、抗告人と同居する3人の婚外子が抗告人から扶養を受ける権利は、民法877条第1項による親子関係の効果によるものであり、その存在は自明である。そして、その権利は、憲法13条個人の尊厳、憲法14条第1法の下の平等に照らし、相手方と同居する嫡出子の権利と同等のものである。

 ところで、家事事件手続法第39条に定められる婚姻費用分担の審判について、最高裁判所昭和40630日決定(昭和37年(ク)第243号)によると、婚姻費用分担に関する争いにつき、分担請求権自体の存否については純然たる訴訟事項であり、その分担額を具体的に形成決定するのが家事審判事項であると説示している。すなわち、婚姻費用分担審判においては、民法760条に明記される婚姻関係における扶養の実体的権利義務の存在は、自明であり前提とされるのと同様に、民法877条第1項に明記された子どもの扶養を受ける実体的権利の存在も前提とされねばならない。また、本件において、婚姻費用分担の根拠たる婚姻関係が存続する以上、民法752条に明記される相互扶助義務も前提であり、抗告人の婚外子と嫡出子への等しい扶養義務に対する相手方の扶助義務が前提とされねばならない。よって、婚姻費用分担審判において、婚外子の扶養を受ける権利を一定に考慮せねばならないことは当然であるばかりか、その権利を嫡出子のものと同等に考慮することを前提としなければならない。

 そして、原審は、婚姻費用分担を具体的に形成決定する根拠として、最高裁判所平成18426日決定(平成18年(許)第5号)にて合理性が是認された、いわゆる標準的算定方式を採用しているのであるから、標準的算定方式においても、婚外子は一定に考慮されなければならないのみならず、嫡出子と等しく考慮されなければならない。言い換えると、標準的算定方式によって婚外子を嫡出子と公平に取り扱わないにも関わらず、婚姻費用分担の形成決定が婚外子にとって結果的に公平なものであるという論理は成り立ちえないのである。

 ところが、原審では、標準的算定方式において、つまりは婚姻費用分担の形成処分において、婚外子が嫡出子と同等に考慮されないどころか、「本件における一切の事情を考慮して」、婚外子である「上記3名の子を具体的に考慮しない」とされた。すなわち、婚姻費用分担において、婚外子の嫡出子と等しく扶養を受ける実体的権利は存在を前提とするものであっても、「一切の事情」を考慮して、婚外子には扶養を受ける具体的形成的権利はないと原審は判断するものである。

 しかし、胎児や乳幼児である子どもに、扶養を受ける具体的形成的権利を減ずるべき有責性等の事由は存在せず、婚姻費用分担において婚外子の生活費を考慮しないことと、原審の説示する抗告人の不貞行為や収入等の「一切の事情」との間に、合理性、関連性は何ら見出だせない。また、婚姻費用分担に関する判例において、子どもが嫡出子である場合、「一切の事情」により、嫡出子の生活費を考慮しない旨の判示したものは一つも存在しない。

 すなわち、原審の婚外子に対する取り扱いは、「門地」によるものにほかならず、最高裁平成2594日決定(平成24年(ク)第984号)にて判示された「子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼす」差別的取り扱いであり、原審は、「事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨である」憲法14条第1項に、直ちに違反し、個人の尊厳を定めた憲法13条、憲法24条にも違反するものである。

 なお、原審は、「婚姻費用の分担金は、公平の観点から一切の事情を考慮して定められるものであって」「上記3名の子の生活費を具体的に考慮しなかったからと言って、ただちに上記3名の子らの養育を受ける権利を侵害し、憲法141項に違反するとはいえ」ないと説示するが、婚姻費用分担において嫡出子の生活費を具体的に考慮する一方、婚外子を考慮しないという、合理的根拠のない差別的取り扱い自体が、憲法14条第1項に違反するものにほかならず、原審の説示は憲法解釈の誤りである。さらに、婚外子の「生活費を具体的に考慮しない」ことは、標準的算定方式において婚外子を考慮しないことであるが、原審は標準的算定方式を基礎として、婚姻費用の具体的形成処分をしているのだから、その算定結果すなわち形成決定が、嫡出子と等しく養育を受ける婚外子の権利を侵害するのは自明であり、その権利の侵害に合理的な理由がないが故に、原審は憲法14条第1項に違反するものといわざるを得ないのである。

 

(3)前件審判の判断を維持存続させる原審は、前件審判の形成決定を終局的に確定させるに等しいが、その合理性、法的根拠はなく、憲法98条第1項にも違反する。

 ところで、原審は、前件審判による婚姻費用分担の形成決定に、あたかも既判力あるかのごとく拘束され、その判断を維持存続させるものである。しかし、婚姻費用分担の審判は非訟事件手続であるところ、弁論主義、処分権主義に基づく訴訟事件手続における既判力はなく、その形成決定は規定の有無にかかわらず取消し、変更が可能とされる。さらに、即時抗告をすることができる終局決定は、非訟手続法第59条及び家事事件手続法第78条による取り消し変更ができないが、最高裁平成161216日決定(平成16年(許)第20号)によると、非訟手続は裁判所が後見的立場から裁量により私的な権利関係を形成する性質を有しており、裁判が不当な場合には、職権でこれを取り消し、又は変更することができるとされる。すなわち、前件審判における婚姻費用分担の形成決定は、終局的に確定されたものでなく、取り消し変更は当然に可能なものである。

 そして、既に6年以上にわたり、存在が自明の婚外子の扶養を受ける実体的権利は、前件審判によって具体的形成的にないものとされており、その上、原審が、前件審判の判断を維持することは、抗告人と婚外子の親子関係の存在を前提にしつつ、婚外子が抗告人から扶養を受ける権利がないことを、審判によって終局的に確定させるに等しいものである。しかしながら、その様態は民法877条第1項に衝突し、法的根拠がないのであり、訴訟手続によって終結的に確定させうるものではない。すなわち、前件審判を維持する法的根拠は一切存在せず、それを維持することは相当ではない。

 そもそも、婚姻費用分担審判において親子関係の存在を前提とする以上、婚外子を考慮するのが、法に矛盾しない合理的な通常の判断であり、一時的であるにせよ、それに相反する前件審判の判断に、合理的根拠はなく、上述のように民法および憲法に違反する不当なものである。さらに、その判断を維持存続させ、終局的に確定させることは、家事事件手続法第39条に基づく家事審判の構造に相反するばかりか、民法877条第1項、憲法14条第1項、さらに憲法98条第1項にも違反し、婚外子の権利を著しく侵害するものであって、法による正義に明らかに反するものである。よって、婚外子に関する前件審判の判断は、維持されるべきではなく、民法第880条の「事情の変更」の有無にかかわらず、直ちに取り消し、変更がなされねばならないものである。

 

4)結語

 よって、抗告の趣旨記載の通り裁判を求める。

 

附属書類

1 特別抗告理由書副本  7通

以上

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