判例 婚姻費用算定に不貞行為による婚外子の養育費は認めない

 

 近年、日本では諸外国と同様に、婚外子にも嫡出子と同様の権利を与えるという傾向があるようだ。

 国際社会から長年にわたって批判を受けていた民法900条4号ただし書の「非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1」とされていた規定が、平成25年9月4日最高裁判所にて違憲と判断されたのは記憶に新しい。

 婚姻関係と婚外子に関する同様の事項で、婚姻関係は実質的に破綻しているものの、日本の制度上離婚は成立していない一方で、婚外子が誕生した場合の婚姻費用の取り扱いについて大きな問題になることがある。

 

 その点について、岐阜家裁中津川出張所平成27年(家)第76号では、

非嫡出子に対する扶養義務を果たすために相手方に対する婚姻費用の減額を認めることは、申立人の不貞行為を助長ないし追認するも同然であり、信義誠実の原則に照らし、認められない』とし、

 婚姻費用の算定にあたり婚外子の養育費を考慮しなかった。

 しかしながら、上記審判は即時抗告され、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号(裁判長裁判官 揖斐潔 裁判官 池田信彦 裁判官 片山博仁)では、

 

『重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは信義則に反すると主張するが、婚外子は嫡出子と同様、抗告人から等しく扶養を受ける権利を有するから、上記主張は採用できない』

 

として、婚姻費用の算定にあたり、婚外子は嫡出子と同様に養育費を考慮された。

 

 また、大阪家裁平成26年(家)第1349号(裁判官 姥迫浩司)においては、過去の審判で婚姻費用の算定に考慮されなかった婚外子が、

婚外子の存在を無視したまま婚姻費用分担義務を定めるとすれば、申立人の信義則違反の責任を婚外子のみに負わせる結果となりかねず、婚外子の福祉の観点から相当ではない

と説示し、婚姻費用の算定にあたり婚外子の養育費が考慮された。

 

 一方で、最近の判例平成29年9月14日京都家裁平成29年(家)第1237号、第1238号(裁判官 松井千鶴子)では、

前件審判大阪高裁平成25年(ラ)第676号において、『原審相手方は不貞行為に及びその結果子が出生し、また将来第2子が出生するのであるが、上記経緯による原審相手方の現在の生活状況を考慮するのは相当ではない』とした判断を維持し、

 

申立人が不貞行為に及びその結果子が出生し、別居に至った経緯や申立人の収入を考慮すれば、婚外子第3子が出生したのは本件決定後の事情であったとしても、婚姻費用分担額を減額すべき程度の事情であるということはできない

 

として、岐阜家裁中津川出張所平成27年(家)第76号と同様に、婚姻費用の算定にあたり、3人の婚外子の養育費は一切考慮しなかった。

 

 その審判に対しても、即時抗告されているが、平成29年12月8日大阪高裁平成29年(ラ)第1204号(裁判長裁判官 河合裕行 裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)においても、

 

原審申立人が不貞行為に及んだ結果、上記3名の婚外子が出生したことを含む原審申立人と原審相手方が別居に至った経緯や原審申立人の収入、本件における一切の事情を考慮して算定したものであるから、その判断にあたって上記3名の婚外子の生活費を具体的に考慮しなかったからといって、直ちに上記3名の子らの養育を受ける権利を侵害し、憲法14条1項に違反するとは言えない』

 

として、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号と異なり、原審の判断を維持し、岐阜家裁中津川出張所平成27年(家)第76号と同様に、婚姻費用の算定にあたり、婚外子は不貞行為の結果生まれたことを考慮し、婚外子の養育費を具体的に一切考慮しなかった。

  上記裁判例では、さらに名古屋高裁平成27年(ラ)第442号に相反する判断があるとして許可抗告が提起された(大阪高裁(ラ許第405号)が抗告は許可されず、

また同時に、憲法第14条第1項違反として特別抗告を提起されているが、最高裁平成30年4月9日(平成30年(ク)第242号、第243号)「特別抗告の事由に該当しない」とし、棄却している。

 

 『憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事項の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものである』

 

とは最高裁が度々説示しているが、

 近年になっても婚姻制度においての婚外子の取り扱いについては、依然として嫡出子と同様に扱うべきか否かが定まっておらず、複雑な問題がはらんでいるようだ。