不貞関係による婚外子は婚姻費用を減額すべき事情ではない

 

 

京都家庭裁判所平成29年9月14日審判

 (平成29年(家)第1237号、第1238号 裁判官 松井千鶴子)

                  

婚外子の誕生を理由として、

婚姻費用の減額を申し立てたところ、

新たな婚外子の誕生も、

婚外子の3人の生活費も一切考慮しない、

一方で嫡出子の成長を考慮し、

婚姻費用の増額を命じた審判 

 

上記審判に対しては即時抗告がされているが、抗告審(大阪高裁平成29年(ラ)第1204号)にても婚外子の養育費は考慮されていない。 

 

 

 

京都家庭裁判所

平成29年(家)第1237号 婚姻費用分担(減額)申立事件(甲事件)

同1238号 婚姻費用分担(増額)申立事件(乙事件)


審判


甲事件申立人・乙事件相手方 X


甲事件相手方・乙事件申立人 Y

同手続代理人弁護士 Z

 

主文

1 大阪高等裁判所が同裁判所平成25年(ラ)第676号婚姻費用分担審判に対する抗告事件について平成25年8月30日付けでした決定の主文第3項を次の通り変更する。

 申立人は,相手方に対し,平成29年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで,毎月末日限り38万5000円を支払え。

2 申立人の甲事件申立てを却下する。

3 手続き費用は各自の負担とする。

 

理由

第1 事案の概要

 本件は,平成23年○月以降別居中の夫婦である当事者が,平成25年8月30日大阪高等裁判所で決定された婚姻費用分担額について,申立人は36万円から22万円への減額を,相手方は36万円から41万5000円への増額を,それぞれ求める事案である。

 

第2 当裁判所の判断

1 認定事実

 本件記録(前提となる当庁平成29年(家イ)第411号及び同第412号事件記録を含む。)及び当庁平成29年(家イ)第410号事件記録によれば、次の事実が認められる。

(1) 申立人(昭和48年○月○日生)と相手方(昭和47年○月○日生)は、平成10年○月○日婚姻の届出をし,平成11年○月○日長男A1,平成14年○月○日二男A2,平成17年○月○日三男A3がそれぞれ出生した。

(2) しかし,申立人は,B(以下「B」という。)と不貞行為に及び,平成23年○月,一人で自宅を出て,相手方と別居するに至り,その後Bと同居して生活している。Bは,看護師の資格を有するが,現在は無職である。

(3) 申立人とBとの間には,平成23年○月○日B1(平成23年○月○日胎児認知),平成25年○月○日B2(平成25年○月○日胎児認知)及び平成29年○月○日B3(平成28年○月○日胎児認知)がそれぞれ出生している。

(4) 相手方は,申立人との別居後である平成23年○月○日、京都家庭裁判所において,申立人に対して婚姻費用分担の調停を申し立てたが,同調停は不成立となって審判手続きに移行し,平成25年5月15日同裁判所は,婚姻費用分担金を月額32万円と定める審判をしたが,相手方及び申立人双方が,これを不服として抗告した。

(5) 抗告審である大阪高等裁判所は,平成25年8月30日,婚姻費用分担金を月額36万円と定める決定をした(以下「本件決定」という。)。なお,本件決定においては,収入について,申立人が平成24年以降1578万円であり,相手方が85万円程度であること,3人の子が0歳〜14歳,塾代等月額5万円を特別経費とすること,申立人とBとの間に第1子が出生し,第2子が出生予定であることは考慮しないことを前提としている。

(6) 申立人は,本件決定後である平成29年2月8日,第3子が出生したことを理由として,甲事件申立てに及んだ(京都家庭裁判所福知山支部平成29年(家イ)第502号として申し立てられ,その後京都家庭裁判所に回付された。当庁平成29年(家イ)第411号)。

(7) 相手方は,平成29年2月28日,子らの成長に伴う学費の増加を理由として,乙事件申立てに及んだ(京都家庭裁判所福知山支部平成29年(家イ)第503号として申し立てられ,その後京都家庭裁判所に回付された。当庁平成29年(家イ)第412号)。

(8) 平成28年の収入は,申立人が1734万1561円,相手方が475万0269円である。申して人と相手方との長男は全寮制の私立高校に進学し,二男は中高一貫教育の公立中学に入学したが,大学進学のため塾に通う予定であり,三男は小学生であるが,二男と同じ中学を受験するため塾に通う予定である。


2 判断

(1) 本件では,婚姻費用分担金について,申立人が本件決定額の減額を,相手方が増額をそれぞれ求めるところ,婚姻費用分担額の減額ないし増額は,本件決定後の事情の変更により,本件決定額を維持することがおよそ相当でない場合に限って,許されるものと解すべきである。

(2) まず,双方の収入に変更が生じていることから,収入を申立人1734万1561円,相手方475万0269円,15歳〜19歳の子2人(なお,二男は,本審判時は14歳であるが,その翌日には15歳になることから15歳とみなして算定することとする。),0歳〜14歳の子1人を前提として,標準的算定方式(家庭裁判所月報55巻7号155頁以下,判例タイムズ1111号285号以下)により婚姻費用分担金の額を算定すると,その額は32万円〜34万円の上方域となるところ,諸般の事情を併せ考慮すれば,現時点では月額33万5000円が相当であり,本件決定時に平成24年以降の相当額とされた31万円を上回ることとなる。

(3) ところで,申立人は,本件決定後,Bとの間に第3子が出生したことを理由に婚姻費用分担額の減額を主張する。

 この点,申立人は,Bとの間に3人の子があり,いずれも認知していることから,3人の子に対する扶養義務があることは否定できない。しかし,申立人が不貞行為に及びその結果子が出生し,別居に至った経緯や申立人の収入,さらにBの稼働能力を考慮すれば,Bとの間に第3子が出生したのは本件決定後の事情であったとしても,婚姻費用分担額を減額すべき程度の事情であるということはできない。

(4) 一方,相手方は,本件決定後,長男,二男及び三男の成長に伴って学費等が増加したことを理由に婚姻費用分担額の増額を主張する。

 この点,の年齢に応じて子に係る費用が増加することについては,前記(2)における額で既に考慮されており,直ちに,これを超えて増額を認めることが相当な事情ということはできない。もっとも、長男が私立高校に進学していることや二男及び三男が塾に通うことを予定していることからすれば,本件決定において考慮された特別費用月額5万円を減額すべき事情もないというべきである。

 また,相手方は,標準的算定表による算定が不相当である旨の主張もするが,本件決定後,標準的算定方式による算定によることが相当でない事情が生じたと認めることはできない。

(5) したがって,本件決定については,婚姻費用分担金を平成29年2月以降当事者の離婚または別居状態の解消まで月額38万5000円(33万円+5万円)と定めるのが相当であり,婚姻費用分担金の減額を求める申立人の甲事件申立ては理由がない。


3 よって,主文のとおり審判する。


 平成29年9月14日

   京都家庭裁判所

       裁判官 松井 千鶴子

 

裁判官松井千鶴子

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裁判官松井千鶴子


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