一切の事情を考慮し、婚姻費用算定において婚外子の養育費を考慮せずとも、憲法14条1項違反ではない

 『一切の事情を考慮する』という文言さえあれば、合理性関連性がなくても、憲法は守らなくて良いものか?


 裁判官は、自らも自己の人生で、『一切の事情を考慮して』、自らに振りかかる、人生の理不尽を忍従するのか ?

 

 

大阪高等裁判所平成29年12月8日決定

 (大阪高裁平成29年(ラ)第1204号)

(裁判長裁判官 河合裕行 

  裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)

(原審・京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号,第1238号 裁判官 松井千鶴子)

 

 

大阪高等裁判所

平成29年(ラ)第1204号婚姻費用分担(減額,増額)審判に対する抗告事件(原審・京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号(甲事件),第1238号(乙事件))

 

決定


甲事件申立人・乙事件相手方 X
甲事件相手方・乙事件申立人 Y

同手続代理人弁護士 Z

 

主文

1 本件抗告をいずれも棄却する。

2 抗告費用は各自の負担とする。

 

理由

 

第1 抗告の趣旨

1 原審申立人

(1) 原審判を取り消す。

(2) 原審申立人は,原審相手方に対し,平成29年2月から同年8月まで毎月末日限り16万円,同年9月から毎月末日限り18万円を支払え。

2 原審相手方

(1) 原審判主文第1項を次の通り変更する。

(2) 大阪高等裁判所が同裁判所平成25年(ラ)第676号婚姻費用分担審判に対する抗告事件について平成25年8月30日にした決定の主文第3項を次の通り変更する。

 原審申立人は,原審相手方に対し,平成29年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで,毎月末日限り52万円を支払え。

 

第2 事案の概要(以下,概略は,原審判の表記に従う。)

1 事案の要旨

 原審申立人と原審相手方は,平成10年○月○日に婚姻し、長男(平成11年○月○日生),二男(平成14年○月○日生)及び三男(平成17年○月○日生)をもうけたが,原審申立人が,平成23年○月に家を出て,以後別居している。

 原審申立人の婚姻費用分担について,大阪高等裁判所は,平成25年8月30日,①平成25年7月までの未払婚姻費用347万6838円の即時支払(本件決定主文第2項)と②同年8月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで毎月末日限り36万円の支払(本件主文第3項)を命じ(同裁判所平成25年(ラ)第676号),同決定が確定したが,原審申立人が,平成29年2月8日,婚姻費用分担減額調停事件を申し立て,原審相手方が,同月28日,婚姻費用分担増額調停事件を申し立て,同年7月10日,同調停は不成立となり,原審判手続に移行した。

 原審は,平成29年9月14日,本件決定主文第3項を,原審申立人に対し,平成29年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで毎月末日限り38万5000円の支払を命じる変更審判をしたところ,これを不服として,原審申立人及び原審相手方がそれぞれ抗告した。

 

2 抗告理由の要旨

(1) 原審申立人

 別紙「抗告理由書(1)」及び「抗告理由書(2)」(各写し)記載のとおり

(2) 原審相手方

 別紙「抗告理由書」(写し)記載のとおり

 

第3 当裁判所の判断

 1 当裁判所も,原審と同様,本件決定主文第3項の婚姻費用分担額を,平成29年2月以降,月額38万5000円に変更するのが相当であると判断する。

 その理由は,次のとおり補正し,後記2で抗告理由について必要な判断を付加するほかは,原審判「理由」の中の「第2 当裁判所の判断」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。

 (1) 原審判2頁5・6行目の「長男A1」の次に「(以下「長男」という。)」を,同頁6行目の「二男A2」の次に「(以下「二男」という。)」を,同頁6・7行目の「三男A3」の次に「(以下「三男」という。)」を各加え、同頁10行目の「看護師の資格を有するが,」を「医療機関に勤務していたが,」と改める。

 (2) 原審判3頁2・3行目の「第3子が出生したことを理由として,」を「Bとの間に第3子が出生したことやBとの間の子らの成長,原審相手方の収入の増加を理由として,」と改める。

 (3) 原審判3頁10行目冒頭から同頁14行目末尾までを次のとおり改める。

 「(8) 原審申立人は、C病院の内科医師として勤務しており,平成28年の給与収入は1734万1561円であった。一方,原審相手方は,D保育園園長として勤務しており,平成28年の給与収入は475万0269円である。

 (9) 長男は,E県の全寮制の私立高校3年生である。二男は,中高一貫校の公立中学3年生であり、通信教育と塾の講習(年3回)を受けている。三男は,公立小学校6年生であり,二男と同じ中学校に入学するために,進学塾に通いながら,通信教育を受けている。」

 

 2 抗告の理由に対する判断

(1) 原審申立人の主張について

 ア 原審申立人は,抗告理由(第2の2(1))の中で,Bとの間に認知している3人の子に対して扶養義務を有しているところ,婚姻費用の算定において同人らの生活費を一切考慮しないことは,上記3名の嫡出子との同等の養育を受ける権利を侵害するものであり,憲法第14条1項に違反する旨主張する。

 なるほど、原審申立人は,未成年者らのほか,上記3名の子に対しても扶養義務を有しているが,婚姻費用の分担金は,公平の観点から一切の事情を考慮して定められるものであって,前記第3の1において原審判を補正引用して説示したとおり,原審申立人が不貞行為に及んだ結果,上記3名の子が出生したことを含む原審申立人と原審相手方が別居に至った経緯や原審申立人の収入,さらにBの稼働能力等,本件における一切の事情を考慮して算定したものであるから,その判断に当たって上記3名の子の生活費を具体的に考慮しなかったからといって,ただちに上記3名の子らの養育を受ける権利を侵害し,憲法第14条第1項に違反するとはいえず,また,原審申立人の婚姻費用分担額を変更すべき程度の事情の変更があったと認められないとした原審の判断に違法,不当な点はない。原審申立人は,本件決定時にはBとの間の第三子の出生を予測し得なかった事情であるとも主張するが,そうであったとしても,そのことをもって上記認定を左右するものではない(ちなみに,原審申立人は,毎月手取りで約85万円の給与・賞与を得ており,その収入額に照らせば,原審相手方に対し,婚姻費用分担金として毎月38万5000円を支払うとしても,原審申立人とBとの間の上記3名の子の生活水準が未成年者らの生活水準に比して著しく低下するとは考えられない。)。原審申立人の上記主張は採用できない。

 

 イ また,原審申立人は,同じく抗告理由(第2の2(1))において,①原審相手方の収入が増加した旨,②原審相手方の収入を650万円と認定すべきである旨,③原審相手方の実母が高収入を得ており,実家から援助をうけられる旨主張する。

 しかしながら,上記①については,前記第3の1において原審判を補正引用して説示したとおり,婚姻費用算定に当たり既に考慮しているものであるし,上記②については,これを裏付ける的確な資料がない。また、上記③については,原審申立人の原審相手方及び未成年者らに対する生活保持義務は,そもそも原審相手方の母が負うべき生活扶助義務に優先するものであるから,婚姻費用分担額の算定に当たり考慮することは,もとより相当ではない。したがって,原審申立人の上記各主張は失当であり,いずれも採用できない。

(2) 原審相手方は,抗告理由(第2の2(2))の中で,未成年者らの私立高等学校の費用や塾等の教育費用に月額29万4000円を要しており,原審申立人は,原審判の認定した婚姻費用分担額に少なくとも20万4000円を増額して負担すべきである旨主張する。

 しかしながら,標準算定方式においては,公立中学校・公立高等学校の子がいる世帯の平均収入に対する公立中学校・公立高等学校の学校教育費相当額を考慮することにより、子に充てられるべき生活費の割合が求められているところ,公立中学校の子のいる世帯の平均収入が828万4332円であり,公立高等学校の子のいる世帯の平均収入が857万2834円であるのに対し,原審申立人及び原審相手方の世帯収入は2209万円以上であって,公立高等学校の子のいる世帯の平均収入を1350万円以上も上回っているため,未成年者らに充てられる生活費の額も,公立中学・高等学校の教育費を大幅に上回る金額が考慮されていることに加え,本件に現れた一切の事情を併せ考慮すれば,現時点において,本件決定において考慮された特別経費5万円を増額すべき事情があるということはできない。原審相手方の主張は理由がなく,採用できない。

 

3 結論

 以上によれば,原審判は相当であり,本件抗告はいずれも理由がないから,本件抗告をいずれも棄却することとして,主文のとおり決定する。

 平成29年12月8日

   大阪高等裁判所第10民事部

 

         裁判長裁判官 河合 裕行 

             裁判官 濱谷 由紀

             裁判官 丸山 徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹

裁判官河合裕行 濱谷由紀 丸山徹