即時抗告理由書(平成29年大阪高裁(ラ)第1204号)

 

原審判

京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号婚姻費用分担(減額)申立事件(甲事件)

京都家庭裁判所平成29年(家イ)第412号婚姻費用分担(増額)申立事件(乙事件)

 

抗告人 X

相手方 Y

抗告理由書(1

 

                 

(1)憲法14条第1項違反 非嫡出子個人の権利を保障すべきである

 原審にて『申立人はAとの間に3人の子があり、いずれも認知していることから、3人の子に対する扶養義務があることは否定できない』と判示されているのは相当である。その非嫡出子に対する扶養義務は、憲法14条第1法の下の平等に基づき、また後述するが、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号においても、「婚外子は嫡出子と同様に抗告人から等しく養育を受ける権利を有し」と判示されており、嫡出子に対するものと同等の生活保持義務であることは明白である。

 また、抗告人主張書面(2)1011頁でも述べたが、非嫡出子が不貞関係のもと誕生したとしても、民法9004号ただし書を憲法141項に違反していたとする最高裁判所平成2594日決定(最高裁判所平成24年(ク)第984号)にて判示されているように、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」とされており、本件においても抗告人と同居する非嫡出子個人の権利は保障されるべきである。

 しかしながら、原審判による標準的算定方式による婚姻費用の算定において、嫡出子の生活費を考慮する一方、非嫡出子の生活費が一切考慮されていない。その算定結果は、申立人収入1734万円に対する基礎収入率は0.33、相手方収入475万円に対する基礎収入率を0.38(甲第38号証、甲第39号証)であるので、相手方世帯に按分される基礎収入はおよそ640万円、抗告人と3人の非嫡出子の抗告人世帯に按分される基礎収入はわずかに113万円である(甲第46号証)。

 よって、原審判によるこのような婚姻費用分担金の算定は、抗告人世帯の非嫡出子にとって極めて過酷で不公平であり、非嫡出子の子ども個人としての権利が守られておらず、抗告人から嫡出子と同等の生活保持義務を受ける権利を明らかに侵害するものであり、憲法14条第1法の下の平等に違反しており不当である

 

(2)3子出生は婚姻費用分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当する。

 妻でない女性との間に子が出生したことによりその扶養義務を果たすため一度調停にて決まった婚姻費用の分担減額申立をした裁判例名古屋高裁平成27年(ラ)第442号)では、婚外子は嫡出子と同様に抗告人から等しく養育を受ける権利を有し、扶養義務を果たすべき非嫡出子の誕生は前件調停の際に予測し得た事情等ではなく、前件調停後成立後抗告人が扶養義務を負う未成年の数に変更が生じたことが認められ、これは婚姻費用の分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するとされた。

 本件においても、3子出生は平成2915日であり、平成25年大阪高裁決定時に予測し得た事情ではない。よって、遅くとも平成291月には、第3子の誕生により、平成25年大阪高裁決定成立後、抗告人が扶養義務を負う未成年の数に変更が生じたことが認められ、上記名古屋高裁抗告決定と同様に婚姻費用分担額の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するとされるべきである。

 また、原審判は「申立人が不貞行為に及びその結果子が出生し、別居に至った経緯」を考慮し、第3子出生について婚姻費用分担額を減額すべき事情であるとは言えないとした。しかし、上記最高裁決定(最高裁判所平成24年(ク)第984号)における判示と同様に、抗告人の不貞行為は非嫡出子に何ら責任がなく、自ら選択修正できない事項を理由として、その子の嫡出子と同等の生活保持義務を受ける権利を侵害し不利益を与えることにほかならないのであり許されるものではなく、原審判による「第3子出生について婚姻費用分担額を減額すべき事情であるとは言えない」との判示は憲法14条第1法の下の平等に反し不当である。

 さらに、 名古屋高裁平成27年(ラ)第442号においても、「 相手方は、重婚的内縁関係から派生した婚外子の存在を考慮するのは、信義則に反すると主張するが、婚外子は、長男及び二男と同様、抗告人から等しく扶養を受ける権利を有するから、上記主張は採用できない」とされており、本件においても第3子出生は「婚姻費用分担額を減額すべき事情」とされるべきである。

 また、「申立人の収入、Aの稼働能力を考慮し、第3子の出生が婚姻費用を減額すべき程度の事情ではない」と判示されたが、抗告人の収入、Aの稼働能力は、名古屋高裁平成27年(ラ)第442号抗告決定と同様に標準的算定方式の中で客観的合理的に考慮され婚姻費用の分担に反映されるべきものであるから、不当である。

 なお、相手方主張書面(2)に基づき、原審にてAは看護師の資格を有すると事実認定がなされているが、Aは看護師ではなく、看護資格等の国家資格を有しているわけではない。また、抗告人主張書面(2)5頁でも述べたが、Aは現在5歳、3歳、0歳の三人の幼児を育てており、到底職につける状況ではなく、無職、無収入であり(甲第23号証)、現状では稼働能力はないと認めるべきである。

 すなわち、遅くとも平成292月には、第3子の出生によって、婚姻費用分担額を減額を認めるべき「事情の変更」は生じており、原審の抗告人の婚姻費用分担金の減額の申立に理由がないというのは不当である。

 

3)前審判、抗告審後の重大な事情の変更

相手方収入の増加は、非嫡出子第一子の生活費を考慮すべき重大な事情の変更である。

 京都家裁審判(平成24年(家)第1407号)にて『原審相手方には非嫡出子がいるが、同子出生の経緯や原審申立人(Y)の収入等を考慮し、同子の生活費を考慮しない』と判示され、申立人とAとの間の非嫡出子第一子は、既に元の審判・決定による婚姻費用決定において考慮されていた事実ではあった。

 しかしながら、相手方は審判当時は実家保育園で非常勤職員として勤務し、平成25年大阪高裁決定時、年収855109円と認定されているが、その後同保育園にて常勤職員として勤務しており、平成28年度の年収は475269円にも至っている(乙第12号証)。すなわち、婚姻費用決定の前提とされた相手方(平成25年大阪高裁決定では原審申立人)の稼働能力に重大な変更が生じており、婚姻費用を減額する「事情の変更」に該当するのは明らかである。また、後述するが、相手方は平成29年になり実家の経営する保育園施設長(園長)に就任しており、提出された源泉徴収票の年収を更に大きくうわまるのであり、さらに稼働能力に変更が生じていることからも、「事情の変更」に該当する。

 また、「原審申立人(Y)の収入等を考慮し、同子の生活費を考慮しない」と判示されているが、相手方の稼働能力、収入に変更があったことは、審判、決定においての「同子の生活費を考慮しない」という判断の前提となる「事情の変更」にも該当し、その変更も認められうるものである。すなわち、相手方の稼働能力の大幅な変更は、婚姻費用の分担額に非嫡出子第一子の生活費を考慮することを認めるべき「事情の変更」に該当するとされるべきである。

 

非嫡出子第二子の出生は婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」である。 

 また、大阪高裁抗告審にて「原審相手方は不貞行為似及びその結果子が出生し、また将来2子が出生するというのであるが、上記経緯による原審相手方の現在の生活状況を考慮するのは相当ではない」と判示されている。

 平成25830日大阪高裁決定時には、第二子は誕生しておらず、現実に生まれていない子に対する扶養義務等を考慮し『現在』の婚姻費用分担額を算定することは現実的ではない。すなわち、大阪高裁決定時には、『現在の』婚姻費用の算定にあたり、『未来』に誕生予定の第二子の生活費を考慮するのは相当ではないと判示されたに過ぎず、第二子誕生後の『将来の生活状況』において、その子の生活費を考慮しないという判示ではない。すなわち、平成25年大阪高裁決定時には、抗告人とAとの間の第二子の存在は将来に予見された事情であっても、婚姻費用の算定において「協議又は審判の際に考慮され、あるいはその前提とされた事情」ではない

 よって、第二子は平成2575日申立人が胎児認知し、平成251028日に誕生しているが、申立人は第二子に対して、扶養義務を負っており、平成25年大阪高裁決定の後に、申立人が扶養義務を負う未成年者の子の人数は「考慮され、前提ないし基準となった事情」から変更が生じており、婚姻費用の減額を認めるべき「事情の変更」に該当するのである。

 

非嫡出子の成長は、婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」に該当する。

 また、抗告人主張書面(2)4頁でも述べているが、申立人と同居する非嫡出子は、第一子が5歳、第二子が3歳となり、現在幼稚園に通園中であり、第一子は来年には小学校に進学する。その教育費だけでも月78万円の費用を要し(甲第16号証、17号証、18号証)、更にはその子どもたちの生活費も相当に必要となっている。原審判では、嫡出子の年齢に応じて子に係る費用の増加を考慮されているのであるから、非嫡出子の成長に応じた費用の増加も当然に考慮されるべきである。すなわち、申立人と同居する非嫡出子の成長による生活費、教育費の増大が婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」に該当することも明らかである。 

 

相手方現状に関する新たな事実

 抗告人主張書面で既に述べているが、相手方は遅くとも平成254月には、父親が理事長であった社会福祉法人○○○○○、常勤保育士として勤務を開始している。

 平成29年○月○日抗告人はインターネットによって相手方の実父がそれまで病気療養中であり、平成29年○月○日に死去されていることを初めて知った(甲第48号証)。またそれに伴い、○○保育園ホームページより相手方が社会福祉法人○○○○○の理事となっていることもあわせ知った(甲第49号証)。そこで、抗告人は○○市役所に問い合わせ、相手方が、現在○○保育園の施設長(園長)であることを確認した。

 平成28年度の半ばまでは、Yの実父が社会福祉法人○○○○○の理事長、同法人○○○保育園の施設長であり、同法人○○保育園園長は相手方の実母であったが、現在は、法人理事長、○○○保育園園長はYの実母である。相手方は、平成28年後半ないしは平成29年初めには保育園の施設長になっていることより、本件にて提出された平成28年度の源泉徴収票の収入より大幅な収入の増加がある。

 厚生労働省による『平成29年度幼稚園・保育所等経営実態調査』によると、私立保育所施設長の平均月収は、545,229円であり(甲第50号証)、年収に換算するとおよそ650万円である。相手方実母が理事長、相手方が理事であること、相手方はわずか数年の勤務経験にて施設長に就任していることより、相手方はいわゆる同族経営社会福祉法人の経営者かつ施設長である。また、主張書面(1)p.13で述べたが、国民生活基礎調査による保育士の平均年収が3,767,000円である一方で、相手方の平成28年度の年収は475万円であり、率にして25%以上も高いことより、相手方の保育園施設長の年収は650万円の25%増しの800万円程度と考えられる。また、抗告人はYの実父より、生前に保育園園長としての源泉徴収票を見せて頂いたことがあったが、その時の収入は900万円前後、その他牧師としての給与200万円〜300万円程度であったと記憶しており、相手方の施設長としての年収は800万円程度と認定するのが妥当であり、少なくとも私立保育園施設長平均年収650万円と認定すべきである。

 また、このような相手方の大幅な収入の増加は、平成24京都地裁審判後に生じた「申立人(Y)の収入等を考慮し、同子の生活費を考慮しない」という判断の変更を認め、婚姻費用減額を認めるべき「事情の変更」に該当するのも明らかである。

 

4)「事情の変更」の重要性 非嫡出子の嫡出子と同等の生活保持義務を受ける権利

 未成熟の子に対する親の扶養義務は生活保持義務であり、法の下の平等を鑑みて、嫡出子、非嫡出子であることを問わず、親との共同生活であるか否かなどを問わず等しいことは議論の余地はない。すなわち、抗告人は、同居する非嫡出子に対して、相手方と同居する嫡出子と等しく生活保持義務を負っている。

 そこで、抗告人及び相手方の現在の収入を鑑み、抗告人、扶養義務のある未成熟子、相手方が各々生活保持義務を果たされるべく、いわゆる標準的算定方式(判例タイムズNo.1111 200341)を用いて、婚姻費用を試算したところ、申立人の現状での婚姻費用の分担額はおおよそ月額18万円〜20万円となる(甲第40号証の1)。

 上記の試算結果は、大阪高裁決定(乙第2号証の2)の基本的月額31万円から大きく乖離している。すなわち、標準的算定方式の妥当性安定性を鑑み、抗告人の収入の増加を加味しても、相手方の収入の増加、及び申立人と同居の非嫡出子の誕生及び成長という『事情の変更』は「本件の決定額を維持することがおよそ相当ではない」極めて重大なものであるのは明らかである。

 

5)標準算定方式により3人の非嫡出子の生活費を考慮し、婚姻費用分担額を決定すべきである。

 以上より、相手方の稼働能力の変更、申立人が扶養すべき未成年者の数の増加、非嫡出子の成長という、婚姻費用分担額の減額を認めるべき重大な「事情の変更」は明らかに存在しており、民法880条に基づき、婚姻費用分担金の減額が認めるられるべきである。 

 すなわち、平成292月以降は、抗告人世帯、0歳〜14歳の子3人、相手方世帯15歳〜19歳の子1人、0歳〜14歳の子2人を前提として、また、平成299月以降は、抗告人世帯、0歳〜14歳の子3人、相手方世帯15歳〜19歳の子2人、0歳〜14歳の子1人を前提として、標準的算定方式により婚姻費用分担金を算定するのが妥当である。

 また、 上述の名古屋高裁平成27年(ラ)第442号との判示と同様に、標準的算定方式の理論(判例タイムズNo.11112003.4.1)(甲37号証)に基づいて算定した本件の婚姻費用分担額については、抗告人主張書面(2)6頁〜9頁、主張書面(4)1頁〜4頁、甲第28号証、甲第40号証で示した。

 さらに、相手方は平成29年初め頃に保育園園長に就任という職業的立場が大きく変わり、本件において提出されている源泉徴収票の年収より大幅な年収の増加があるのだから、それを基準として婚姻費用を算定するのが妥当である。そこで、相手方年収650万円、それに対する基礎収入率0.36として、婚姻費用を再算定した(甲47号証)。

 

抗告人基礎収入 1734万円×0.33≒572万円

相手側基礎収入 650万円×0.36≒240.5万円

 

.20172月〜20178

(抗告人の基礎収入)×(相手方世帯の生活費指数の合計)÷(生活費指数の総計)−(相手方の基礎収入)

=(572+240.5×100+90+55+55÷100+90+55+55+100+55+55+55

240.5

  ≒191万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 159,000

 

.20179月〜20199月(あるいは長男成熟)

=(572+240.5×100+90+90+55÷100+90+90+55+100+55+55+55

240.5

  ≒213.3万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 178,000

 

ウ.201910月(あるいは長男成熟)〜20228月(あるいは二男成熟)

=(572+240.5×100+90+90÷100+90+90+100+55+55+55

240.5

  ≒177.0万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 148,000

 

エ.20229月(あるいは二男成熟)〜20246月(あるいは三男成熟)

=(572+240.5×100+90÷100+90+100+55+55+55)−240.5

  ≒98.9万円(年額)

  ひと月あたりの負担額 82,000

となり、抗告の趣旨の通り、婚姻費用分担金の減額をすべきである。

 

6)本件決定後、特別経費月額5万円を減額する事情の変更

相手方の可動能力の大幅な変更と相手方の追加経費の負担

 相手方は抗告人と別居後、実家が経営する社会福祉法人で勤務するようになり、平成29年になり保育園施設長に就任しており、平成25年大阪高裁決定後に大幅な稼働能力の変更があり、特別経費を減額すべき「事情の変更」に該当する。

 平成25年大阪高裁抗告決定では、教育費としての追加経費5万円は相手方の収入が少なく、追加経費を仮に抗告人と相手方の収入で按分してもないに等しく、相手方は特別経費に対する負担を一切していない。しかし、平成25年抗告決定以降、相手方の稼働能力に大幅な変更があり、追加経費を按分し相手方も上乗せの教育費を負担すべきである。

 教育関係費としての追加経費について、相手方は主張書面(1)(2)において、抗告人と相手方の総収入ないしは基礎収入によって按分しているが、阪高裁平成26年(ラ)第595号では、『(超過教育関係費は、)抗告人及び相手方がその生活費の中から捻出すべきものである。そして、標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資と為し得る金額が同額になることに照らして、上記超過額を抗告人と相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である。』と、超過の教育費を義務者、権利者ともに等しく負担することが判示されており本件においても追加経費については、少なくとも抗告人、相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である。

 

別居後の経緯と抗告人の教育費の負担

 標準的算定方式による教育費の算定において、平均年収に対する公立学校の教育費の割合を考慮し、生活費指数に組み入れられたものであり、そこに含まれる教育費は、公立学校に関する学校教育費ではない。現実に、世帯が平均年収以下であれば、公立学校に関する教育費以下しか含まれておらず、平均年収以上であれば、それ以上の教育費が含まれることになる。標準的算定方式では、公立学校の教育費を利用して教育費を指数化している、すなわち教育費以外の生活費に対して生活扶助額を指数化するのと同様の構造であって、標準的算定方式による生活費は生活保護水準の生活費しか含まれていない訳ではないのと同様に、教育費は公立学校に関する学校教育費ではない。それによる教育費は教育費以外の生活費と同様に世帯収入に応じた標準的な教育関係費であり、標準的算定方式によって算定された養育費、婚姻費用は、教育関係費を含む世帯収入に応じた標準的な生活費とするのが妥当である。

 相手方は「私立学校への進学については、両親の学歴、出身校やその職業、収入、社会的地位等を総合考慮して負担が判断されるべき」と主張するが、抗告人は標準的算定方式による婚姻費用分担金により相手方に対して収入に応じた標準的な教育費を十分に支払っているといえる。

 また、相手方も自認するように別居後に数年間にわたって、相手方は子どもたちの進路について抗告人に相談することも報告することも一切なかったのだから、そのことは大阪高裁決定後に生じた特別経費を減額すべき重大な「事情の変更」に該当するのである。

 

相手方主張の教育費の増大

 相手方は教育費の増加をふまえて、婚姻費用の増額を主張するが、原審において、「この年齢に応じて子に係る費用が増加することについては、前記(2)における額にて既に考慮されており、これを超えて増額を認めることが相当な事情ということはできない」という判示は正当である。

 そもそもその教育費増額の主張は、抗告人が平成292月に婚姻費用減額申立調停を行った後に、それに応じる形で婚姻費用増額申立は行われている。しかしながら、長男が私立○○高等学校、二男が○○高等学校附属中学に進学したのは、平成274月である。また、三男は現在小学6年生であり、小学校に進学したのは別居後の平成24年4月である。よって、相手方の主張する教育費の増額の時期は概ね平成274月であり、平成292月前後において相手方が主張するような教育費の増額の事由は生じていない。すなわち、その経緯から相手方の教育費の増額を主張しているものの、真にはその必要性は乏しいものであることは明白である。

 

抗告人と同居の非嫡出子の教育費 非嫡出子の等しく教育を受ける権利

 非嫡出子のうち第1子は5歳、第2子は3歳であり、嫡出子と同様に私立の幼稚園に通園している。その教育費は、主張書面(2)4頁、甲第18号証甲第19号証に示したが、月額78万円に上っている。抗告人と同居の非嫡出子の教育費は、その生活費が考慮される場合において標準的算定方式によって同等に按分されたとしても、それに含まれる教育費を超えている。

 しかしながら、その教育費は抗告人世帯のその他の生活費を削減し捻出すべきものであり、相手方と同居する嫡出子の過分な教育費についても、相手方がその世帯の生活費から捻出するべきである。相手方の標準的算定方式を超える過分な教育費を申立人に負担させることは、申立人世帯の子どもの負担にもつながるのであり、非嫡出子の嫡出子と同等の生活を送る権利、教育を受ける権利を害するものであって、憲法第14条第1項法の下の平等に反しており、不当である。

 

小括

 以上より、平成25年大阪高裁の決定後、相手方は保育園の施設長にもなり稼働能力に大幅に変更があったこと、数年間に渡り相手方は子どもの進学について抗告人に相談も報告も一切行っていないこと、また、抗告人が扶養すべき未成年の非嫡出子は増加し、成長していることは、本件決定のおいて考慮された特別経費月額5万円を減額するべき「事情の変更」に該当し、少なくとも追加経費を相手側も負担すべきであり、原審判による特別経費月額5万円を抗告人が負担するのは不当である。

以上

 

 

 

抗告人 X

相手方 Y

抗告理由書(2)

 

(1)緒語

 抗告人は、抗告理由書(1)の(1)(1頁から2頁)にて、婚姻費用の分担において、合理的な根拠のない非嫡出子に対する差別的取扱いを容認するにほかならない原審の判断は、憲法14条第1項に違反していることを主張した。また、原審における婚姻費用の算定結果が(甲第46号証)、非嫡出子に著しく不利益を与える差別的取り扱いといわざるをえず、「本件の決定額を維持することがおよそ相当ではない場合」であることも明白であることを示した。

 ところで、婚姻費用分担調停、審判、決定がなされたあと、『事情の変更』が生じた際には、民法880条の類推より、その変更をなすことができるとされる(東京高裁平成1697日決定)が、東京高裁平成261126日決定(平成26年(ラ)第1512号)によると「審判確定後の事情の変更による婚姻費用分担金の減額は、その審判が確定した当時には予測できなかった後発的な事情の発生により、その審判の内容をそのまま維持させることが一方の当事者にとって著しく酷であって、客観的に当事者間の衡平を害する結果になると認められるような例外的な場合に限って許されるというべきである」とされている。

 本件審判では、前回の婚姻費用分担申立事件においての京都家庭裁判所平成25514日審判(平成24年(家)第1407号)(以下「前審判」という)および、大阪高裁平成25830日決定(平成25年(ラ)第676号)(以下「前回抗告決定」という)にて判示された、「婚姻費用の分担において非嫡出子を考慮しない」という判断を維持している。そのため、前審判、前回抗告決定の際に、既に抗告人から胎児認知をされ誕生していた婚外子第1子について、「事情の変更」はないとしている。また、婚姻費用のうち子どもの費用、養育費はその定義より、未成熟子に対する費用であるが故、出産が予定されていても胎児に対して義務は発生せず、一般的に婚姻費用分担額において考慮せず(東京高裁昭和63年9月14日決定、宮崎家裁延岡支部昭和55年12月13日審判)、出産後に考慮すべきである事情とされるが、前回抗告決定時に胎児であった婚外子第2子の誕生についても、その存在は考慮されていたとして、事情の変更はないとしている。さらに、前回抗告決定時に予測されたものではない婚外子第3子についてすら、「婚姻費用分担額を減額すべき程度の事情の変更ではない」とし、その結果、原審では婚姻費用の分担において、3人の婚外子の存在、生活費は一切考慮されていない。

 抗告人は抗告理由書(1)の(2)(2頁から4頁)において、本件審判について名古屋高裁平成28219日決定(平成27年(ラ)第442号)と矛盾しており不当であることを主張した。また、抗告理由書(1)の①(4頁から5頁)において、前回抗告決定時に比して相手方の稼働能力が変更になっていることは婚外子第1子を考慮する事情の変更であると主張し、さらに抗告理由書(1)の②(5頁から6頁)において、婚外子第2子は前回抗告決定時胎児であり、その存在は将来に予見されたものであっても婚姻費用の算定において協議または考慮され前提とされた事情ではなく、その子の誕生は婚姻費用を減額を認める事情の変更であると主張した。

 以下の(2)においては、本件審判において前審判、前回抗告決定を維持する判断について、大阪家裁平成26年(家)第1349号に対する審判を検討し、また②憲法14条第1項、第98条、および最高裁判所大法廷平成24年(ク)第984号に対する決定を鑑み、誤りであることを述べる。

 また、特別経費としての超過教育関係費について、抗告人は抗告理由書(1)の(6)①、②(10頁から12頁)において、相手方の稼働能力に大幅な変更があること、別居後子どもの進路については相手方だけで判断し決定していることが、前回抗告決定時の特別経費を減額すべき「事情の変更」であり、上記の経緯、大阪高裁平成26年(ラ)第595号に対する決定、および憲法第14条第1項法を鑑み、抗告人が特別経費としての超過教育関係費費を負担するのは不当であると主張した。

 以下の(3)では、①大阪高裁平成26年(ラ)第595号に対する決定および、②標準的算定方式の合理性を是認した最高裁判所平成18年4月26日決定、および憲法第14条第1項を鑑み、原審においての特別経費としての超過教育費の按分に対する判断の誤りについて述べる。

 

(2)原審判の前回抗告決定を維持することの判断の誤り

 本件審判においては、前回抗告決定について「3人の子が0歳〜14歳、塾代等月額5万円を特別経費とすること、申立人とAとの間に第1子が出生し、第2子が出生予定であることは考慮しないことを前提としている」とし、また、「婚姻費用分担額の減額ないし増額は、本件決定後の事情の変更により、本件決定額を維持することがおよそ相当ではない場合に限って、許されるもとの解すべきである」とし、本件審判においても前回抗告決定を維持し、婚姻費用分担において、申立人とAとの間の婚外子1子、第2子は考慮しないことを前提としている。

 また、相手方は本件審判の相手方主張書面(2)第1−2−(2)において、「本件において、申立人とAとの間の婚外子の存在については、既に前の審判及び決定時に『考慮され、その前提ないし基準とされた事情』である」(3頁)「従って、申立人の非嫡出子の存在を理由に婚姻費用の減額を認めることは、もとの審判の判断を変更することに他ならず、民法880条上許されない」(4頁)と主張する。

 以上に基づく、原審の判断が誤りであることを以下で述べる。

 

 ①大阪家庭裁判所平成26年7月18日審判(大阪家裁平成26年(家)第1349号)を検討し、上記原審判の判断は誤りである。

 大阪家庭裁判所平成26718日審判(平成26年(家)第1349号)は、以前の審判において婚姻費用算定に考慮されなかった婚外子の存在が、新たに婚姻費用分担を定めるにあたり、当該子の福祉の観点から、考慮された判例である。すなわち、もとの協議・調停・審判の時に「婚外子の存在」は考慮されその前提ないし基準とされた事情であり、その際「婚姻費用の算定において婚外子の存在を考慮しない」という判断がなされていても、後に合理的な根拠があればその判断の変更は許されることを判示している。

 上記審判では「婚外子の出生から6年、申立人による婚外子の認知から1年半、平成21年審判に基づく申立人の相手方に対する婚姻費用の分担義務が定められてから5年がそれぞれ経過している。このような状態で、今後も婚外子の存在を無視したまま婚姻費用分担義務を定めるとすれば、申立人の信義則違反の責任を婚外子のみに負わせる結果ともなりかねず、婚外子の福祉の立場からは相当ではない。特に、申立人の収入が減少している本件においては、婚外子の養育に与える影響は、平成21年審判当時に比しても深刻といわざるを得ない」と判示されており、事情変更としての合理的根拠は、婚外子の出生からの成長、認知時期、婚姻費用分担義務が定められてからの期間、子どもの福祉、収入の増減などであった。

 本件において上記審判を援用すると、別居から6年、非嫡出子第1子が誕生して6年、前回の婚姻費用が定められてから4年、また、前回抗告決定時、胎児であった第2子が誕生してからも既に4年が経過し、更には、平成291月には第3子も誕生しており、今後も婚外子を無視したまま婚姻費用の分担を定めることは、3人の婚外子に、抗告人の信義則違反の責任を負わせ著しい不利益をもたらすにほかならず、子ども達の福祉の立場から相当ではないと言える。また、抗告人の収入が増加しているとはいっても、10%程度の増額にすぎず、前回抗告決定時には1人であった婚外子が既に3人に増加しており、婚外子らの養育に与える影響は、前回抗告決定時と比しても深刻なものと言える。更に、相手方の収入も、前回抗告決定時より数百万円も増加していることによって、上記の事情と合わせ、本来平等であるはずの嫡出子と婚外子との間の福祉にさらに大きな不公平を生じるものであり相当ではないのである。

 よって、本件においても、3人の婚外子の福祉の立場から、婚姻費用の分担において、その子らの生活費を考慮するのが相当である。

 

 ②憲法14条第1項および憲法98条、最高裁判所大法廷判決(最高裁判所大法廷平成19(行ツ)第164号)、および最高裁判所大法廷決定(最高裁判所大法廷平成24年(ク)第984号)を鑑み、上記原審判の判断は誤りである。

 ところで、婚外子の国籍確認請求事件に対する平成2064最高裁判所大法廷判決(平成19(行ツ)第164号)および、民法婚外子相続分差別規定を憲法違反とした平成2594最高裁判所大法廷決定(平成24年(ク)第984号)『非嫡出子の差別的取り扱い』という点で本件と類似しているが、それらでは「憲法141項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである」と判示されている。また、後者最高裁決定では「昭和22民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢および我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でないこの区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる」と、非嫡出子であるということのみをもって、合理的根拠なく差別的取り扱いをするのは、禁止されねばならないと判示されている。さらに、上記で判示されているように、我が国が批准している世界人権宣言第252項、児童の権利宣言第1条、児童の権利に関する条約2条第1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約第24条第2においても、『子どもが出生によっていかなる差別も受けない』とする趣旨の規定が存在しており、憲法98条に基づき、これらの法規は遵守されねばならない。

 一方で、前審判において「相手方は、平成23111日申立人以外の女性との間に子をもうけているが、上記のような経緯や申立人の収入等を考慮すると、この子の生活費を考慮するのは相当ではない」と判示し、非嫡出子の生活費を考慮しない根拠は、申立人の不貞行為、権利者の収入としている。

 しかしながら、『婚姻費用分担の目的』は、信義則違反に対しての法に基づいた損害賠償等の効果や、法制度にない懲罰的制裁的効果を生ずることではないのは当然であり、民法730条、752条、760条、877条に基づき、夫婦間扶養義務あるいは未成熟子扶養義務、すなわち被扶養者に対しての「生活保持義務」を遂行させることなのである。婚姻費用の分担において非嫡出子の生活費を考慮しないことに、万一、懲罰的意味合いがあったとしても、信義則違反に対して、何ら責任のない非嫡出子に結果として著しい不利益をあたえること自体が、合理的とは到底いえない。婚姻費用分担においての未成熟子に対しての費用は、親子関係の効果から生じるものであって、婚姻費用分担を定めるにおいて嫡出子の存在を考慮し嫡出でない子の存在を考慮すべきでないという結論は論理的に当然であるとは説明できるものではないし、非嫡出子が抗告人の不貞行為の結果誕生したという、子にはどうすることもできないことを理由に、婚姻費用分担において非嫡出子の生活費を考慮しないとしている点は、その『婚姻費用分担の目的』との合理性関連性の認められる範囲を著しく逸脱していると言わざるを得ない。

 また、前審判においては「申立人(Y)の収入を考慮して、この子の生活費を考慮しない」とも判示されているが、扶養義務者の収入やその増減によって嫡出子と非嫡出子を差別的に取り扱うことと、未成熟者に対する生活保持義務を遂行させる『婚姻費用分担の目的』との間にも、合理的関連性は何ら見出だせるものではない。なお、子どもの扶養義務者の収入やその増減は、婚姻費用分担において標準的算定方式の中で客観的合理的に考慮されるものであって、そのことによって不公平は生じるべくはないのであって、標準的算定方式適用以前に考慮すべき子どもの数を恣意的に増減させることが、当事者間に直ちに著しい不公平をもたらすのは当然である。

 よって、前審判、前回抗告決定にての、婚姻費用の分担において非嫡出子の生活費を考慮しないという判断は、合理的な理由のない非嫡出子の差別的取扱いであり、上記最高裁判決最高裁判所大法廷平成19(行ツ)第164号)最高裁決定最高裁判所大法廷平成24年(ク)第984号)を鑑みても、更に言うなれば、上記最高裁決定にての婚姻期間中に形成された財産の分与においてよりも、相互扶助義務が形骸化した状況での婚姻費用の分担においては、法律婚を尊重し嫡出子と非嫡出子を差別的に取り扱う合理的な根拠は一層に乏しく、憲法14条第1項に違反していたと言わざるをえない。すなわち、憲法98条に基づき、前審判および前回抗告決定は無効であり、現在において既に維持すべきものではないのは明白である。

 さらに、本件審判においては、前回抗告決定時に将来に予想されている嫡出子の成長による生活費の増加を婚姻費用増額を認める事情とする一方で、予想されていたとはいえ胎児であった非嫡出子の誕生を婚姻費用減額の事情としないばかりか、予測されていなかった非嫡出子の誕生すら婚姻費用分担において考慮しない判断は、不公平極まりなく、上記と同様に婚姻費用分担において合理的な根拠なく婚外子を差別的に取り扱うのを容認することにほかならず、憲法14上第1項に違反しているといわざるを得ない。

 

 ③小括

 以上より、原審の非嫡出子の生活費を婚姻費用の分担において考慮しないという判断は誤りであり、相手方と同居する3人の嫡出子、および抗告人と同居する3人の非嫡出子、抗告人、および相手方の生活費をそれぞれ考慮した上、抗告人抗告理由書(1)の(5)(8頁から10頁)に述べたとおり、名古屋高裁平成28219日決定(平成27年(ラ)第442号)における算定方法を援用し、標準的算定方式を用いて婚姻費用分担額を決定すべきである。

 なお、標準的算定方式においての総収入に対する基礎収入の割合(以下「基礎収入率」という)については、婚姻費用算定表、表1から表19(判例タイムズ No.1111 2003.4.1)を用い、権利者の収入が0の場合においての、養育費・婚姻費用の月額とそれに対するおよその義務者の年収、子どもの人数、当事者の生活費指数を用いて算出し(甲第52号証)、図表化した(甲第51号証)。

 それによると、概ね年収1,734万円に対する基礎収入率は、0.33、年収475万円に対する基礎収入率は0.38、年収650万円に対する基礎収入率は0.37となる。

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(3)超過教育関係費の按分について、原審判断の誤り

 ①大阪高裁平成26826日決定(大阪高裁(ラ)第595号)に矛盾した誤り。

 特別経費としての超過教育関係費について、阪高裁平成26826日決定(大阪高裁(ラ)第595号)では、「この超過額は、抗告人及び相手方がその生活費の中から捻出すべきものである。そして、標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資となし得る金額が同額になることに照らして、上記超過額を抗告人と相手方が2分の1ずつ負担するのが相当である」と判示されている。しかしながら、原審判においては、「本件決定において考慮された特別経費月額5万円を減額すべき事情もない」とした上で、抗告人一方のみに特別経費を負担させることが判示されているが、その判断は、上記大阪高裁決定に矛盾し誤りである。

 上記大阪高判例においては、義務者、権利者の収入を合算すると高額になり、当事者の生活費が潤沢であることから、超過教育費を生活費から捻出すべきであると判示されていると考えられるが、本件においても、婚外子の生活費を考慮したとしても、相手方世帯に按分される基礎収入、生活費は高額であり、十分に超過教育費を捻出できるのであるから、同様に等分処理されるのが相当である。また、上記判例と類似し、相手方は実家にて生活しており、家賃などの居住費の負担がないこと、同居している実母は相手方の勤務する社会福祉法人の理事長であり、且つ同法人○○○保育園の施設長であり(相手方も同法人○○保育園の施設長であり、同居の実姉も同法人保育園の保育士である)、高額の収入があり実家から援助を十分に受けられること、別居後、相手方の子ども達の進路、進学についての判断の過程は、すべて抗告人の全く関係しない相手方の実家を中心とした社会生活、日常生活の中でなされていること、このような実態より相手方世帯の超過教育費は相手方が負担するのが相当である。

 

 ②是認されている標準的算定方式の合理性(最高裁判所平成18426日決定)を逸脱した誤り。

 また、原審判抗告人主張書面(4)(7頁)(甲第43号証)でも述べたが、標準的算定方式は、最高裁判所平成18年4月26日決定「婚姻費用分担額を算定した原審の判断は、合理的なものであって、是認することができる」と判示されている。ところが、超過教育関係費を抗告人のみが負担する原審による算定結果は、甲第46号証で示したように、仮に抗告人1人世帯であったとしても、抗告人に按分される生活費は年額およそ113万円であるに対して、相手方、および第1子、第2子、第3子に按分される生活費は、それぞれ173万円、176万円、176万円、115万円で、極めて不均衡、不公平であり、婚姻費用分担の目的、標準的算定方式の基本をなす「生活保持義務」の趣旨に反しており、不当である。

 さらに、この算定結果によって抗告人に按分される年額113万円に過ぎない基礎収入が、実際には抗告人と非嫡出子3人の世帯に按分されるのであり、抗告人と同居する3人の非嫡出子に著しい不公平と不利益をもたらす『婚外子の差別的な取り扱い』にほかならず、本件の決定額をそのまま維持することが「一方の当事者に著しく酷であって、客観的に当事者間の衡平を害する結果になる」ことも明白である。

 

 ③憲法14条第1項に基づいた非嫡出子の嫡出子と同等の教育を受ける権利、生活を送る権利を考慮しない誤り。

 さらに、憲法14条第1項に基づき非嫡出子は嫡出子と同程度の教育を受ける権利を有している。そこで、嫡出子3人に月額5万円の超過教育費が按分されるのであれば、同様に、非嫡出子3人にも月額5万円の超過教育費が按分されるべきである。よって、超過教育関係費は合わせて10万円になり、抗告人、相手方で等しく按分し特別経費は5万円ずつの負担になるが、それはすなわち、抗告人、相手方が同じ世帯の嫡出子、非嫡出子の超過教育費をそれぞれ負担することを意味しており、抗告人が相手方世帯の超過教育費の負担は生じないことになる。なお、申立人と同居の非嫡出子は幼児であるが、2人は嫡出子と同様に私立の幼稚園に通園しており、その教育費は標準的算定方式における子どもの学習費調査統計表(判例タイムズNo.1111 2003.4.1 295頁 資料4)(甲第37号証)を参照しても、公立小学校、公立中学校の教育費を大きくうわまっており、年少であるがゆえに生活費、教育関係費を多く要しないという主張には根拠がない。

 言い換えると、相手方世帯の超過教育費を抗告人に負担させることは、抗告人世帯の非嫡出子の生活費、教育費の減額につながり、非嫡出子に不利益をあたえ、福祉を害する結果になるのである。そして、嫡出子と非嫡出子は同等の生活を送り、教育を受ける権利があること、現状の相手方世帯の実態、別居後の嫡出子の進路についての判断、決定の過程を鑑みても、抗告人が相手方世帯の嫡出子の超過教育費を負担することによって非嫡出子に不利益を与えるという差別的な扱いに対する合理的な根拠は既に見いだせないというべきであり、抗告人が特別経費として相手方世帯の超過教育費を負担するのは相当ではない。

 

 ④小括

 以上より、原審においての特別経費としての教育関係費を抗告人一方が負担するという判断は誤りであり、抗告人、相手方各々の世帯での超過教育関係費は各々が世帯の生活費から捻出すべきであり、抗告人が相手方世帯の超過教育費を負担するのは相当ではない。

 

(4)結語

 本件においては、婚姻費用分担にあたり、抗告人と同居する3人の婚外子の存在を考慮し、また、特別経費として超過教育関係費の上乗せはせず、標準的算定方式によリ婚姻費用分担額を定めるのが相当である。

 よって、抗告の趣旨の通り、裁判を求める。

 

附属書類

抗告理由書(2) 副本 1

甲第51号証〜甲第52号証 各正本1部、副本1

以上