婚姻費用算定表の合理性を実質的に否定した高等裁判所裁判例(大阪高裁平成29年(ラ)1204号)

 

養育費、婚姻費用の分担金については、『生活保持義務』の考えに基づき、概ね、東京大阪裁判官によるいわゆる標準的算定方式による試算結果に基づいて決定されている。分担金については、幅があるものの、2〜3万円程度のものであり、私立の医科大学への進学を同意していたなどという特殊事情を除けば、試算結果からあまりに逸脱した支払を命令することはあってはならない。

標準的算定方式においては、夫婦それぞれの収入、及び、民法877条に定められる『生活保持義務』を果たされるべき子どもを考慮し、算定される構造となっている。

 

 ところが、大阪高等裁判所平成29年12月8日決定(平成29年(ラ)第1204号)(裁判長裁判官 河合裕行 裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)においては、権利者は嫡出子3人と同居している一方で、義務者には同居している認知された婚外子3人がいる事情であった。そして、嫡出子と婚外子民法877条に基づき等しく扶養を受ける権利があるのは自明である。

 にもかかわらず、同決定では、標準的算定方式において、嫡出子の生活費を考慮する一方で、全く合理的な説明になっていないことは明白であるが「不貞行為によって誕生した経緯を考慮し」婚外子の生活費を考慮しないまま、婚姻費用の分担額を決定している。また、そうすることに理由に義務者の収入を考慮してと説示しているが、そもそも、義務者の収入は、標準的算定方式の中で既に考慮されているものであり、それ以上に、収入によって扶養義務のある同居の子を考慮しなくてよいという合理性は当然のことながらない。

すなわち、上記大阪高裁の決定は標準的算定方式を外観上採用していても、合理的な根拠が一切なく、恣意的に考慮すべき子どもを考慮しない上で、適用されている。いいかえれば、標準的算定方式を使用しているが、義務者、権利者の年収を裁判官によって実際と異なる金額を用い、あるいは、扶養すべき子供の数も、裁判官の裁量で、増減させたものと言っても過言ではない。標準的算定方式による算定結果は、最高裁で合理的なものであるとされているが、このような、法的に扶養を受ける権利が明記されている権利者を合理的根拠なく考慮しないという恣意的な操作が加わったものが合理的なものであるとは当然にいえない。

さらに、大阪高裁決定では、義務者と同居している3人の婚外子を無視し、考慮しないで、標準的算定表を用いて定めた婚姻費用の額について、

「義務者と同居する婚外子3名の子の生活水準が嫡出子らの生活水準に比して著しく低下するとは考えられない」と判断している。

 この結果は、権利者が単身でも、婚外子3人と同居していても、按分される生活費の額は権利者が単身の場合の額と同じである。

 すなわち、言い換えると、大阪高裁平成29年(ラ)第1204号においては、『標準的算定方式においての分担金は、義務者単身である場合は、あきらかに過大であって妥当ではない』と判断しているも同然なのである。そして、このことは、最高裁判所平成18426日決定(平成18年(許)第5号)によって、標準的算定方式による婚姻費用の算定を、『合理的なものであって、是認することができる』とした最高裁判所の判断をも否定するものである。

 あるいは、京都家庭裁判所平成29年(家)第1237号、第1238号(裁判官 松井千鶴子)の審判書および、大阪高等裁判所平成29年(ラ)第1204号(裁判長裁判官 河合裕行 裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)の抗告決定の文面から、如何ばかりか憶測されることであるが、

『不貞関係に由来して、誕生した、いわば劣等である婚外子であるのだから、正統な嫡出子と同程度に扱われ、生活水準を送るというのはおこがましいのである、卑しき婚外子なのだから権利は制限されて当たり前であり、それは忍従すべきなのである』

という、美しき国日本の価値観が潜在的に影響しているのかもしれない。

 なお、この算定結果について、最高裁によって合理的とされた判断と相反することを理由として許可抗告を申し立てたが、『該当しない』とし抗告が許可されなかった(大阪高裁平成29年(ラ許)第405号)(裁判長裁判官 河合裕行 裁判官 濱谷由紀 裁判官 丸山徹)。